書評

科学技術哲学

人種差別問題でオススメの本3冊

ワトソン発言の件(finalventさんのまとめを見ればいいと思う)で何か書こうと思っていたのだけど、ちょっとまとまったものを書く暇がなくて出遅れてしまった。  やはり日本ではこの件での認識の甘い人が多いと感じる。誰とは言わないが、ワトソンと同レベルの剥き出しの偏見をしっかり抱いている人が、ざっと見るだけでもかなりの割合でいる。彼らとワトソンの違いは、反発を受けるとわかっている発言をあえてする自信...
科学技術哲学

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』

今日の世界の各地域の状態には大きな格差がある。  ユーラシア大陸発祥の民族・文明・国家は先に高度な発展を遂げた。  その侵略によってアメリカ大陸やオーストラリア大陸の先住民は絶滅あるいはその寸前にまで追いやられ、アフリカ=ユーラシア大陸からの移民に取って代わられてしまった。  アジアの各地やアフリカ大陸は、植民地にされたり住民が奴隷にされたりしたとはいっても、今でも有史以来の住民の子孫が暮らしてい...
政治経済社会

岡田斗司夫『ぼくたちの洗脳社会』

404 Blog Not Found:いつまでもケチと思われるなよ  この件。現時点での情報から判断できる限りではほとんど弾さんと同じ感想なんだけど、どうしても納得がいかない。  岡田斗司夫はもちろんいろいろな方面で有名な人物だが、私にとって一番の印象はこの『ぼくたちの洗脳社会』の著者、というものだった。  最近公式サイトで全文掲載されているのを知ったのでリンクしておく。かなり面白い本だった記憶が...
科学技術哲学

スティーヴン・ジェイ・グールド『神と科学は共存できるか?』10月18日発売

amazonからのメールおすすめが初めて役に立った。予約注文しとこう。  ドーキンスの『神は妄想である』の中で『千歳の岩』という名前で批判的に言及されていた本だ。  原題が『ROCKS OF AGES』だから直訳としては千歳の岩で正しいが、さすがにわかりにくすぎるということで邦題がこうなったんだろう。  実をいうと『神は妄想である』はもうだいぶ前に読んだのだが、どう言及すればよいものか迷っている。...
科学技術哲学

スティーヴン・ジェイ グールド『暦と数の話―グールド教授の2000年問題』

365番目のエントリなので、暦にちなんだ本を紹介。  グールドは進化論関係ばかりでなくてこんなのも書いている。サヴァン症候群の息子に触れている部分などは、他の本では見られなかった彼の側面が見られて面白いだろう。  日頃なにげなく使って当たり前だと思っている年月日、曜日の概念にも様々な歴史があることがわかって少し違った気分で生活できるようになるかもしれない。 参考リンク。 もうひとつの「2000年問...
政治経済社会

ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』

最近ちょっとずつ経済学に興味が向いてきた私。  昔からいろいろな分野に一通り首を突っ込んでは、一通り納得がいくまで熱中し、そして結構すぐ飽きる、というパターンを繰り返してきた中で、不思議と経済学にはこの歳になるまでほとんど興味が向いた覚えがない。  なぜだろう。元々お金にあまり執着がない*1せいかもしれない。  人間と社会の複雑さがもっとも濃密に絡み合う経済の動きにまともな理論などあるはずがない。...
科学技術哲学

レオナルド・サスキンド『宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す』

『エレガントな宇宙』以来の超弦理論本。なかなかよかった。おすすめ。  生命はごく最近まで歴史上常に、あり得ない驚異であり究極の神秘と思われてきた。科学の進歩とともに今日では生命もその誕生も特に不思議とは思われなくなってしまったが、それでも驚異はステージを一つ繰り上がって保存されている。  「では、なぜそもそも宇宙の物理法則が生命という化学的特性をそれほど不思議ではなくするようなものになっているのか...
科学技術哲学

ピーター・フォーブズ『ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー』

そでの宣伝文より抜粋。  吸盤もないのに壁や天井に張りついて楽々と歩くヤモリ、泥の中でも汚れ知らずのハスの葉、色素もないのに鮮やかな青に輝くモルフォ蝶……これらの、生き物が発揮する「離れ業」はどういう仕組みなのかという謎が、ナノテクや超高解像度顕微鏡、遺伝子組み換えなどの最先端技術で解き明かされたとき、人はその巧みさに驚き、魅了された。しかし人はそこに留まらず、いつしかそれらの秘密を科学技術で再現...