書評

科学技術哲学

リチャード・ドーキンス『祖先の物語~ドーキンスの生命史~』

こ・れ・は、素晴らしい! 殿堂入りクラス。  内容については訳者あとがきの記述が十全なのでその引用に留めるが、グールドを精神上の師の一人に数える私には特別な感慨がある。  とにかくこれは超オススメ。  本書は、進化生態学の巨匠ジョン・メイナード・スミスに献じられているが、ある意味で、「宿敵」スティーヴン・ジェイ・グールドに捧げられた本とも言える。『社会生物学論争史』の中でセーゲルストローレは、ドー...
科学技術哲学

ショーン・B・キャロル『シマウマの縞 蝶の模様 エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』

突然だが、この世で最も驚異的な自然現象はなんだろう? 虹? オーロラ? 台風? 噴火? 津波? 超新星爆発?  大きい方はそんなところかもしれないが、小さい方に目を向けると胚発生が有力な候補に入ってくると思う。驚異と感じないとすれば、それは毎日その結果を見すぎて慣れてしまっているからだろう。  最近になって急速に進歩した発生生物学についての本。面白かった。以下は前書きからの抜粋。  ノーベル物理学...
政治経済社会

ニコラス・サリバン『グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換』

図書館でタイトルに目が留まったので読んでみたが、なかなか面白かった。  グラミン銀行については結構前から知っていたのだが、バングラデシュでこんなことが起きているとは知らなかった。  メモを書いておこうかと思ったが、すでに良いまとめが見つかったのでリンクさせてもらおう。 机の上が汚いSEが書く日記 - 書評:『グラミンフォンという奇跡「つながり」から始まるグローバル経済の大転換』ニコラス・P・サリバ...
科学技術哲学

コンラート・ローレンツ『人イヌにあう』

「動物」と言ったとき最初に連想されるのはまずイヌかネコだろう。「刷り込み」の発見等の功績によりノーベル医学生理学賞を受けたコンラート・ローレンツのイヌネコ限定エッセイ集である。  彼の『ソロモンの指輪』は私が誰に対しても絶対の自信を持っておすすめする本の一冊である。彼の動物にたいする限りない知識と愛情の深さには敬愛の念を抱かずにはいられない。この本もイヌ・ネコが好きか嫌いかに関わらず楽しめるだろう...
WEB情報通信

石野純也『モバゲータウンがすごい理由 オジサンにはわからない、ケータイ・コンテンツ成功の秘けつ』

私はオジサンだということがはっきりしました。本当にありがとうございました。……とか冗談言ってる場合ではない。本当にさっぱりわかっていなかった。  私は大学に入るまで携帯を持たなかったし、持ってからも通話・メール・カメラ以外の機能は全くと言っていいほど使わない。メールもPCが使えない時だけだ。 ITmedia News:絵文字も空気も読めません 10代がハマるSNS「モバゲータウン」を28歳(♀)が...
科学技術哲学

ドナ・ハート ロバート W.サスマン『ヒトは食べられて進化した』

ヌーやインパラのような動物がライオンやハイエナに捕まってもりもり食われている。テレビの自然番組でお馴染みの光景である。  では霊長類――いわゆる猿――がヒョウやトラに捕まってもりもり食われている場面を見たことがあるだろうか?  私は昔この手の番組を平均よりかなり頻繁に見ていたと思うが、そんな場面は全く見たことがないと断言できる。  これは何らかの真実の反映なのだろうか? つまり猿は賢くて強いから他...
WEB情報通信

西村博之『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? 巨大掲示板管理人のインターネット裏入門』

読んだ。面白い。内容的には特にどうということはないのだけど改めて思った。やはりひろゆき*1という人は本当に不思議だ。  いい加減な根拠でハチャメチャな思考をしているような時でも、結論としてはなぜか重要な部分を必要十分なだけ掴んでしまう。たとえばこの辺、  '70年代には、宇宙に行けばきっと何かあるはずだなど、無限の未来に対する無限の投資がありました。しかし、アメリカは国家として巨額の投資を行ったに...
文化芸術宗教

ゴセシケゴセシケ

地上でもっとも凶々しいSF 合成脳のはんらん(合成怪物)  ずいぶん前に読んだ覚えのあるはずの上のリンクの文章がなぜかはてブの注目エントリに上がっていた。私もこの本は小学校の図書館で読んで強く記憶に残っている。  今思えばSFに限らず私の趣味一般、たとえば登場人物皆殺し系の悲劇的というか破滅的な結末の話が好きだったりすることなどにかなり影響を与えているような気がする。  「『脳に意識がある』という...