書評

科学技術哲学

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』『祈りの海』『ひとりっ子』

長編と平行してグレッグ・イーガンの短編集も読んでいたので、ここでまとめて感想。  結論から言うとこれ読んでちょっとでも興味をおぼえた人はとりあえず『祈りの海』は読もう。残り2冊をどうするかは読めば自動的に決まるはずだ。 『しあわせの理由』 適切な愛  保険の契約の関係で、事故で体を失った夫の脳を、新しいクローンボディが成長するまでの間自分の腹の中で生かしておかなければならない羽目になった妻の話。 ...
政治経済社会

アービンジャー・インスティチュート『自分の小さな「箱」から脱出する方法』

知りもしないのにいつの間にかアマゾンアソシエイトの売り上げの中に入っていたこの本。この手の自己啓発本はまったく読まないのだが買ってみた。  ちょっとは期待したのだがやっぱりあまり面白くなかった。「悪いことは自分のせい、良いことは人のおかげ」という要点をいろんなたとえ話で繰り返しているだけ。  元はアメリカで売れた本らしいが、まあ欧米では斬新に感じるのはわからなくはない。しかし日本ではそんなの啓発さ...
科学技術哲学

グレッグ・イーガン『万物理論』

『順列都市』『ディアスポラ』に続きグレッグ・イーガン3冊目。  ところどころ急ぎすぎたり間延びしすぎたり、あるところでは無駄に細かすぎたり逆にあっさりしすぎてたりする印象。個人的お気に入り度は 『ディアスポラ』>>『順列都市』>『万物理論』  かな。でも書かれた順に良くなっているみたいだからそれでいいのか。  本筋の万物理論の他にも様々なSF要素が出てきて、ウィルスの人工合成の話も出てきたけど、今...
科学技術哲学

古くて新しい最先端SF グレッグ・イーガン『ディアスポラ』

『順列都市』に続いてグレッグ・イーガン作品を読んでみた。個人的には順列都市以上に面白かった。これが現代の『スターメイカー』なんだろうなあ。  スターメイカーでは無名のイギリス人が主人公だったけど、こっちでの主人公がもはや現在の意味での人間ですらなく、最初からコンピュータ内のバーチャル都市でプログラムによって作られた「市民」。  そのわりには地球の危機が起きたりいろんな星を渡り歩いたり他の文明と接触...
告知募集報告

amazonアソシエイト年間ベストセラー発表

また会長のマネをしてみます。今日まで一年間の売り上げです。しかしいかに売れないかの証明にしかなってない超低レベルランキングなのであまり期待しないで下さい。では行きます。 1位:聞こえる ゴロ寝枕(25個)  なんで枕がダントツ一位やねーん! なんと25個(ネイビー16個とレッド9個の合計)を記録したのはこれ。ITmediaに取り上げられたのが大きかった。 2位:囚人のジレンマ―フォン・ノイマンとゲ...
政治経済社会

一家に一冊! 面白くてためになる カール・シファキス『詐欺とペテンの大百科』

Life is beautiful: 悪徳マルチ商法の被害者をインタビューしてみた  「ネズミ講」の意味がわからない大学生がいるという話を聞いて是非オススメしておかなければと思ったのはこの本です。  滅多にない耐え難いほど面白い本でもう何回読んだかわかりません。まずどんな本であるかがうまくまとまっている訳者あとがきから引用します。  近年の急速な社会のハイテク化に、情報化に伴い、次々と新手の詐欺や...
政治経済社会

『ヤバい経済学』とセットで読め! ティム・ハーフォード『まっとうな経済学』

『ヤバい経済学』を買ったとき隣に並んでいた。邦題とカバーもわざわざ『ヤバい経済学』と似たようなイメージになっていた。  原題は"The Undercover Economist"で、本文中にたびたび出てくる「覆面経済学者」に相当する単語で、全然関係がない。「あからさまな便乗商法だな」と思いつつ前書きを読んだら予想外に十分独立して面白かったので一緒に買って帰った。  『ヤバい経済学』は、経済学者が経...
政治経済社会

冷徹な頭と温かい心 スティーヴン・レヴィット スティーヴン・ダブナー『ヤバい経済学─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』

こちらを見て購入したが大正解。確かに最近読んだ本の中では別格の面白さ。  経済学の本というより「経済学者がその着眼点と手法でもって普段経済学が扱わない社会の事象を研究したらどうなるか?」を書いた本だ。 学校の先生も相撲の力士もそれをするインセンティブがあれば八百長をする。統計データから見抜くこともできる。 KKKも不動産屋もその力の源は情報にある。正しい情報が知れ渡ってしまえば力を失う。 麻薬を扱...