歴史

政治経済社会

ウィリアム・パウンドストーン『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』

『ライフゲイムの宇宙』と『囚人のジレンマ』の二大傑作でうちではお馴染みウィリアム・パウンドストーンの行動経済学本。  それらと同等とまでは言えないが、かなり面白い。  「価格」というものがいかに曖昧模糊とした人間的な構築物であるかということが繰り返し強調される。  この場でただ一言だけ憶えておくならば「ふっかけた方が得」か。  タイトル通り面白いだけでなく実益につなげることもできそうなので、営業や...
政治経済社会

マルク・レビンソン『コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった』

コンテナ輸送というものは、あまりにも見慣れすぎていて、随分昔からあったことのように思ってしまうが、現代的な意味でのコンテナ輸送は、実はたかだかここ半世紀程度のものに過ぎないらしい。  昔の海上輸送では、小分けの荷物を沖仲仕と呼ばれる男達が毎回毎回積み方を工夫しながら、いちいち積み下ろししていた。時間がかかる上に、荷抜きと呼ばれる盗みも横行していた。  コンテナ化はこれらの欠点を解消し、輸送コストを...
アニメコミック

よしながふみ『大奥』

今まで全く気にも止めていなかったが、どこかでジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞を取っていることを知って、TSUTAYA のコミックレンタルで借りた。予想よりかなり面白い。  元々BL系の作者だという話から、とりあえず男が掘られてりゃ高く評価しちゃう的なアレじゃないのか? という予断もあったのだが、いい意味で裏切られた。  男女逆転というテーマを聞いたときは、そんなに興味は持てなかった。ジャイアン...
政治経済社会

ウィリアム・バーンスタイン『「豊かさ」の誕生―成長と発展の文明史』

現実の歴史で1820年ごろ以降に初めて見られたような、継続的かつ急速な経済成長には、 私有財産制 科学的合理主義 資本市場 輸送・通信手段  の4条件が全て揃う必要があるという話。同著者の『華麗なる交易』と合わせ、 マット・リドレー『繁栄』 グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史 』  が面白いと思った人が、次に読むのに最適。 参考リンク 今週の本棚:中村達也・評 『「豊かさ」の誕生…』=W・...
科学技術哲学

みんな進化論を絶対視しすぎじゃないかな

マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』  元より長くなってしまったが、上記エントリに対する補足。  はてなブックマークのコメントなどで、あまり予想していなかった反応がいくつかあった。そのほとんどは「ちょうど進化論以前の生物分類学のようなものになる」という部分を、過度に否定的な意味に受け取った結果と思われる。  進化論ほど広く受容され使用されている理論には...
政治経済社会

グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史 』

10万年の世界経済史 - 情報の海の漂流者  で知って、面白そうだと思って借りてきた。なかなか面白かった。以下は私の超要約。 1800年ぐらいまでの地球の標準的な人類は、1人あたりで見ると、狩猟採集生活をしていた新石器時代と比べて、有意に豊かになっていたとは言えない。ずっと生存スレスレだった。 その理由は、技術の緩やかな進歩などによる資源増加は人口の増加で、気候変動や疫病による不作などによる資源減...
科学技術哲学

ロバート・N・プロクター『健康帝国ナチス』

藤原辰史『ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』 ボリア・サックス 『ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト』  と合わせて“いまここにいるナチス”三部作と私が勝手に命名しておすすめしている本の中の一冊。全体の趣旨がよくわかるように序文から抜粋。  本書はファシズムについての本である。と同時に、科学についての本でもある。おそらく我々はどちらに関してもかなりの...
文化芸術宗教

田中芳樹『銀河英雄伝説』

銀河英雄伝説 ON THE WEB 銀河英雄伝説 - Wikipedia  ここで言及したので、記憶に上ってきた。  多分一番有名な架空歴史ラノベ。ヤン・ウェンリーってユルいヒーローの先駆けなんじゃないだろうか。  ちゃんと読み直したわけじゃないが、今考えるといろんな意味で「911もオウムもソ連崩壊も起きてないときの小説だなあ」と思う。  「話の展開に詰まったらとりあえず原理主義的宗教のテロで誰か...