歴史

政治経済社会

歴史の振り子と螺旋階段

政治や文化の歴史は、振り子のように左右に振れるというが、この人口に膾炙したイメージは、いささか単純すぎると思う。  歴史は一度きりの現象で、決して繰り返したりはしない。もちろん、 歴史は同じようには繰り返さないが、韻を踏む。 The past does not repeat itself, but it rhymes. (マーク・トウェイン - Wikiquote)  という言葉がすでにあるが、振...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年12月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『最新脳科学が教える 高校生の勉強法 東進ブックス』★★★★  池谷裕二著。胡散臭い分野だけど、まともな内容。個人的には新しい内容はなかっ...
科学技術哲学

ドナルド・E・ブラウン『ヒューマン・ユニヴァーサルズ―文化相対主義から普遍性の認識へ』

ここ1世紀ぐらいの人類学の歴史を超大雑把に捉えれば、文化相対主義が盛り上がって頂点を極めた後、徐々に後退している歴史であるといえる。  もちろん、今日の基準に照らせば馬鹿馬鹿しいほどに極端な相対主義は、さらにその前の、もっとずっと極端に酷い文化差別・性差別がまかり通った時代への反動として生まれてきたものだ。  そのことを忘れて、単に後知恵の批判をするだけではまずい。それらの歴史も踏まえた上で、新し...
科学技術哲学

ヘンリー・ペトロスキー『フォークの歯はなぜ四本になったか―実用品の進化論』

フォークの歯はなぜ四本になったか ヘンリー ペトロスキー 復刊リクエスト投票  まだちゃんとした書評を書いていなかったが、復刊を知ったのでオススメしておく。私も図書館で何度も借りて読んでいるが、これは手元に置いておきたいので早速注文した。  「形は失敗に従う」  というのがこの本の大きな主張。実用品の形などというものは、機能的な要請によって決まると普通は思われているが、必ずしもそうではない。同じ機...
文化芸術宗教

ヘロドトス『歴史』

歴史 (ヘロドトス) - Wikipedia  有名すぎる本だけど、このエピソードがなんか無性に好き。  プサンメティコスはいろいろ詮索してみたが、人類最古の民族を知る手段を発見できず、とうとう次のような方法を案出した。生れ立ての赤子を全く手当り次第に二人選び出し、それを一人の羊飼にわたして羊の群と一緒に育てるように言いつけ、その際子供の前では一言も言葉を話してはならぬ、子供はほかに人のいない小屋...
アニメコミック

マルジャン・サトラピ『ペルセポリスI イランの少女マルジ』

イランの裕福でリベラルな家庭に生まれた女性の自伝的マンガ。これは最高に面白かった。つべこべ言わずにとにかく読め。この面白さは文章では伝えづらい。  雰囲気を見たければ映画版のトレーラーを。映画は未見だがなかなかよさそうだ。実際はトレーラーの印象よりもシリアス成分多めである。 【ニコニコ動画】ペルセポリス 予告  2巻も大急ぎで借りてきて続けて読んだが、1巻と比べるとあまり面白くない。1巻だけでもち...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年8月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険』★★★  鈴木光太郎著。懐疑本としてなかなかおすすめ。 『オオカミ少女はいなかった ...
科学技術哲学

フェリペ・フェルナンデス=アルメスト『人間の境界はどこにあるのだろう?』

詳しくはshorebirdさんのところを参照してほしいのだが、私も長谷川眞理子先生訳と書いてなければ手に取らなかったような気がする。内容的にも訳者あとがきのところが一番有益だったような。  どうも『ゲノムと聖書』に似たような「西洋思想の枠組みからは絶対に出ないぞ!」というマイナスの決意みたいなものがちょっと鼻に付く。  『ゲノムと聖書』同様に、最初からキリスト教と西洋思想の伝統にしがらみがない人に...