歴史

科学技術哲学

ジョー・マーチャント『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』

オーパーツはアニメ・コミック・映画の世界ではよく出てくるが、残念ながら現実ではどれも捏造か勘違いだ。ほぼ唯一の例外が、紀元前の沈没船から発見されたこれ。    アンティキティラ島の機械と呼ばれる、高度な機械仕掛けの時計のように見えるもの。どう考えても一般に知られている機械式時計の発明よりも1400年は早い。    アーサー・C・クラークは「この知識が継承されていたなら、産業革命は1000年以上早ま...
映画・ザ・ムービー

誰が見張りを見張るのか『ウォッチメン』オススメ度 10/10

これはすごい。『ダークナイト』級のアメコミ映画なんて二度とあるまいと思っていたが、早くもそれに匹敵するレベルのものが来てしまった。超面白い。R-15相応のグロさに耐えられる人には絶対におすすめ。  ……と言いたいところだが、予備知識ゼロでも見れるダークナイトと違ってこれはグロ以外でも大いに人を選ぶ。“終末時計”と言われて何のことかわからない人は、世代的にどうやっても楽しめないかもしれない。  その...
文化芸術宗教

繁田信一『殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語』

要約すると文学しか注目されない平安貴族の暮らしだけど、実情はわりとカオスでしたという話。当たり前と言えば当たり前なのだけど、こういう幻想が破壊される感は個人的に大好きだ。  後半はだんだん似たような内容の繰り返しになってきて、一般的にはあまり面白い本とは言い難いので、そんなに積極的におすすめはしない。ものはついでだが、源氏物語については、 ふみまよう  の音読mp3と、 源氏物語の世界 再編集版 ...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年4月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 土居健郎『続「甘え」の構造』★  『「甘え」の構造』の続編。つまらなくはないが前作以上のものは特に。 立花隆『電脳進化論―ギガ・テラ・ペタ』★...
科学技術哲学

アルフレッド・W.クロスビー『ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10~20世紀』

アルフレッド・クロスビーつながり4冊目。それなりに面白かったが、『銃・病原菌・鉄』とほぼ完全に重複する内容であり、そちらの方が時代的にも後でより洗練されているので『銃・病原菌・鉄』を読んだことがある人は、差分の分しか面白くないかもしれない。訳者あとがきより。  本書の原題はEcological Imperialism: The Biological Expansion of Europe, 900...
科学技術哲学

アルフレッド・W・クロスビー『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』

アルフレッド・クロスビーつながりで三冊目。1918〜1919年のスパニッシュ・インフルエンザ、通称スペインかぜのパンデミックを扱った本。超不謹慎だが終始、映 画 化 決 定 ! ! というテロップが脳内を流れっぱなしであった。めちゃめちゃ面白い。  強毒性のインフルエンザが発生した。折しも世界は第一次世界大戦のまっただ中。冷たい雨の中を行軍し、狭い船に詰め込まれて移動する大勢の兵士達が、戦時公債購...
科学技術哲学

アルフレッド・W・クロスビー『数量化革命 ヨーロッパ覇権をもたらした世界観の誕生』

『飛び道具の人類史』が面白かったので、アルフレッド・クロスビーつながりで借りてきた。  中世のヨーロッパは全てが宗教一色に塗り固められていて文明はむしろイスラム圏や中国より劣っており、近代の繁栄が始まったのはギリシア文明のルネッサンスから、というのは中学校でも習う話だが、それを“数量化”という観点からまとめた本。訳者あとがきより。  世界を理解する枠組みが、従来のような定性的で目的論的なものから、...
科学技術哲学

デニス・シュマント=ベッセラ『文字はこうして生まれた』

文字から計算が生まれたのではなく計算から文字が生まれた。文字に繋がる抽象化にまつわる最も古い遺物は一定間隔で刻み目の入った骨。数えていたものはおそらく日数。 家畜を管理するために、一頭囲いから出すごとに一つ小石や小枝を拾い、一頭囲いに戻すたびに一つ落とす、といったことをしていた時期があったはず。*1 シュメールの遺跡では粘土で作られた様々な形のトークンが出土する。農耕の始まりと定住生活によって増え...