スーザン・A・クランシー 『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』

なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか (ハヤカワ文庫NF)

 UFOは一時期に比べてめっきり人気なくなったので時期外しの感はあるけど、わりといい本だったと思う。『抑圧された記憶の神話』は怖すぎて読めないという人にいいかも。

 アブダクティーの研究から見えてきたいちばんのポイントは、わたしたちの多くは神のような存在とのコンタクトを求めていて、エイリアンは、科学と宗教との矛盾に折り合いをつける方法なのだということだ。わたしぱ、ユングの「地球外生物は科学技術の天使である」という言葉に賛成する。
 アブダクションを信じることによって得られるものは、世界じゅうの多くの人たちが宗教から得ているものとおなじであるのは明らかだ。人生の意義、安心、神の啓示、精神性、新しい自分。正直言って、わたしもいくらかほしいと思うものもある。アブダクションの信奉は、事実ではなく信仰にもとづいた宗教の教義のひとつだと考えることができそうだ。実際、多くの科学的なデータが、ビリーバーは心理的な恩恵を受けていることを示している。彼らは、そういうものを信じていない人より、幸せで健康で人生に希望を持っている。わたしたちは、科学や技術が幅をきかせ、伝統的な宗教が批判される時代に生きている。天使や神に宇宙服を着せ、エイリアンとして登場させたら納得がいくのではないだろうか?
 わたしたちは、スピリチュアリズムや、心の平穏や、不思議な力や、人生の意義を求めている。ベルトルト・ブレヒトが戯曲『ガリレイの生涯』のなかで語ったように、「わたしたちを主人公にした大宇宙という名の劇が書かれていて……こんなつまらない星のあわれな役よりもっとすばらしい役が用意されているのだと励ましてくれる」なにかか必要なのだ。エイリアンによる誘拐は、科学技術の時代における新しい宗教への洗礼なのかもしれない。

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