ガイア教の天使クジラ5 金儲けのための宣伝や政治利用を批判するのが論の目的ではない

白鯨 下    岩波文庫 赤 308-3

第4回】 【目次】 【第6回

 ずいぶん間が空いたが久しぶりに続きを書く。

 あちこちからリンクされているのは結構だが、若干誤読されていそうな気配も出てきたので、ちょっと今までの流れを止めて、このシリーズで扱わない事は何かということを書こう。

 まず、反捕鯨運動の始まりやそのきっかけに関しては扱わない。昔調べた名残でまんざら知らないわけではないが、一切扱わない。これらは――少なくとも私にとっては――どうでもよいことである。

 仏伝でいえば毒矢の譬。山火事で煙に巻かれている時に、

「この火事のきっかけは、落雷か、放火魔か、タバコのポイ捨てか、子供の火遊びか、DQNのバーベキューパーティーか、それを知りたい。解明するまで逃げたりしないぞ!」

 と考えることは、明らかに馬鹿げている。そのような時に必要とされている知識は、火を消す方法であり、煙から逃れる道筋である。

 どうも2ちゃんねるなどでは、反捕鯨運動が始まったきっかけは、ベトナム戦争での枯れ葉剤使用による環境破壊への非難をそらすためのCIAの謀略だったことになっているらしい。

 私はそれが本当かどうかは知らない。わかるのは私がCIAだったら是非やってみたいということだけだ。

 かつて悪の組織大好きの子供だった私にとっては国家予算を使って愚かな諸国民同士の憎しみを煽り立てて利益に繋げるなんてシチュエーションは想像しただけでも快感で身悶えする。

 ただし、私がCIAの上層部だったら、そのような風が吹けば桶屋が儲かるみたいな胡乱な計画を持ってくる奴はクビにするだろう。

 私は、このような陰謀論は、本当の事情を直感的・心情的に理解することの難しい日本人が、観察される事実との矛盾を説明付けるためにひねり出したものであることの方に金を賭ける。他の多くの陰謀論が同じような経緯で生まれているように。

 次に、反捕鯨運動が政治利用されているとか、自然保護団体の資金集めに利用されているとかいうことも扱わない。

 この世に人の感情を強力に掻き立てるものがあれば、政治家や商売人がそれを利用しようとするのは当たり前である。

 でオーストラリア政府作成のビデオの存在を教えてもらった。

 見ればわかるように、これは実際は日本人に向けてのものではなく、そのような働きかけを行っている政府を自国の選挙民に向けて宣伝する動画である。

 オーストラリアの政治家の仕事は日本人の気分を良くすることではない。私がオーストラリアの政治家でも同じことをするだろう。現に「我々は捕鯨反対のために戦っています」と言うだけで票を入れる人間が大勢いるとわかっている時に、そうしないで一体どうするというのだ。

 私は「私がそうしなければ私よりもっと人種差別的なあいつがそれを利用して政権を取ってしまう危険をあえて犯すことになるのだ。それは日本人にとっても不幸である」というような言い訳をいくらでもすることができる。言い訳のみならず実際それが正しいこともありうる。

 私が自然保護団体でもやはり同じことをするだろう。オゾンとか二酸化炭素とかいう難しいことは一切わからないが、一言クジラと言うだけでポンポン金を出す気のよい人たちが現実に目の前にいるというのに、あえてそれを諦めることに一体なんの意味があるというのか。

 クジラがどうあれ人種差別的な白人も白人にコンプレックスを持っている日本人も常に腐るほどいるのだ。ちょっと日本人を不愉快にさせるかもしれないからといって、ちょっと人種偏見を助長するかもしれないからといって、本当に地球を救うかもしれない資金を目立って減らすようなことをするならば、どう考えてもそれは犯罪ではないか。

 オーストラリアの政治家は「このような素晴らしい動物が生存しない地球に住むことが想像できますか」と言っている。一般論として、大の大人が4歳児にもできるはずのことを「できない」と言う場合、実際には「したくない」と言っているのだと解釈すべきである。

 オキノテヅルモヅルやコウガイビルやイボイノシシやコビトカバ*1が生存しない地球に住むことは想像できるのに、クジラが生存しない地球に住むことは想像したくないというのは一体どういうことなのだ?

 なぜクジラなのだ? クジラは彼らにとって何なのだ?

 「オゾンほど心優しい分子はない。壊される理由ない」と言って身体を張って止めようとする人気女優の一団がいないのはなぜなのか。イルカがいなくなってもたぶんメチャクチャ困るようなことは何も起きないのに対してオゾンが「絶滅」したら我々の思い描くような普通の生活はほとんど不可能になってしまうというのに。

 なぜイルカなのだ? イルカは彼女らにとって何なのだ?

 私があなたに説明したいのはこれらのことだ。誰かがこの問題を政治利用しているとか金にしたりしているということではない。そんなことは見ればわかるのだ。もちろん喜ばしいことだとは思っていないが、これらを批判するのは他の人にお任せする。

 この先そのあたりの事情を押さえておかないとわかりにくい部分も出てくるので、あまり知らない人は、

 ぐらいは読んでおくことをおすすめするが。

第4回】 【目次】 【第6回

おまけ

 まあ口直しにこれでもどうぞ。

コメント

  1. 匿名 より:

    続きが非常に気になります。
    オキノテヅルモヅル?のくだりは
    非常に笑えました。
    我々の暮らしてる現代社会の「正体」の謎解きの様でもあり、スリリングだと思います。

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