ガイア教の天使クジラ10 水棲類人猿説(アクア説)と鯨類崇拝

人は海辺で進化した―人類進化の新理論

第9回】 【目次】 【第11回

 二人目もやはり日本人である。たまたま見かけたネット上の文章だが、あまりにもまとまりがよくて感激したので利用させていただいた。

 又聞きの又聞きを紹介しているだけの人を晒し上げるのが目的ではないので、あえてネットマナーを無視して引用元は書かない。

 ただし「オレの文章を引用するならちゃんと出典明記しやがれ」という文句が来たら大喜びで従う用意がある。

人類進化論アクア説

 人類進化論アクア説というのをご存知でしょうか?私は、昔読んだ故景山民雄さんのエッセイ集で知りました。

 ごく簡単に説明すると、人類の祖先はイルカやクジラと友達だったことがあった、ということです。

 現在一般的に知られている人類進化論はサバンナ説と呼ばれていて、人間の祖先とされる類人猿が前足で道具を使うために直立歩行を始め、やがて火を使うようになった、というものです。

 しかし、さまざまな化石の発見により、ヒトは道具を使い始めるよりも早く直立歩行を始めていたことがわかりました。また類人猿の化石の見つかった900万年前から、直立歩行を始めた人類の化石の見つかった350万年前の間の、実に550万年もの期間の人類の化石が見つかっていない(ミッシングリンクと呼ばれています)ことなどから、サバンナ説では説明のつかない部分を埋める説として現れたものです。

 つまりミッシングリンクの期間、ヒトは水中にいたという訳です。陸上で生活するほ乳類のうち、体毛がないのはヒトだけです。陸上生活する上で体毛がないのはとても不利なのにです。体毛のないほ乳類は水中で生活するイルカやクジラの仲間達だけなのです。この他にもアクア説を裏付けるさまざまな説明が存在しますが、この説を信じるために、私にはこれだけで十分でした。

 詳しくは、人類進化論アクア説1水生類人猿説 – Wikipediaをどうぞ。

 人類の祖先がイルカやクジラと水中で一緒に暮らしていたなんて素敵すぎます。

 陸上で生活していたほ乳類が、何かの理由で水中で生活するようになり、そしてまた何かの理由でヒトやその他のほ乳類(象なんかがそうだといわれているようです)は地上に戻り、イルカやクジラは水中に残ったのです。

 この説を裏付ける証拠はまだまだ足りないようですが、これの方が素敵だという理由だけで、私は断然この説を支持します。

 私がこの説に初めて触れた、故景山民雄さんのエッセイ集の中にはこんな話しもありました。

 クジラの脳は人間の何倍もの大きさがあります。クジラはその大きな脳で何を考えているのでしょう?

 クジラは人間のように経済活動を行っていません。生きていくためには、自分の食べる物を探して海の中を効率的に移動するだけでいいのです。あと考えることは子孫を残すために子育てをすることくらいでしょうか。

 それくらいのことのために、あんな大きな脳は要りません。しかし退化することなくあの大きさが保たれているのですから、あの脳は何かに使われているのです。では何を使われているのでしょう?

 景山さんはこう考えました。哲学しかないと。人間が人間とは何かを考えるように、クジラはクジラとは何かをあの大きな脳で考えているのです。そしてクジラは、考え抜いて出た答えを書物に残すことができませんので、すべてその脳の中に蓄えていきます。それから海の中で起こった出来事を、古代から現在に至るまですべて覚えていて、それらを次々と子孫に言い伝えていくのです。

 これを裏付ける証拠もいっさいありませんが、これがホントだとしたらあまりにも素敵なのでどんどん信じちゃいます。

 カナダにクジラが水中で発する声を解析している学者さんがいて、最近すこしずつ何を言っているのかわかり始めてきているそうですが、この説を信じているとワクワク加減が全く違ってきます。

 こちらは前回冒頭部のちょうど逆と言えるだろう。必ずしもガイア教とイコールではないものとしての鯨類崇拝の一例である。前回ほどはぶっ飛んでいないが、いわゆるビリーバーとしての特性がはっきりと読み取れよう。

 水生類人猿説はリンク先のwikipediaに詳しいので読んで欲しいが、科学としてはトンデモである。

 必ずしもトンデモだからいけないとは言わない。後に正しかったと判明する仮説も大抵最初はトンデモであるからだ。*1

 実際、提唱された年代から考えて、当初は鯨類崇拝とは無関係のそれなりにまじめな人類学上の仮説だったと思われる。*2

 しかし、1940年代に提唱されて今ではとっくに葬り去られている人類学上の仮説を“他に”いくつ知っているだろうか?

 現在でもこうした形で人気と知名度を保っているのは、この文章に見られるように間違いなく鯨類崇拝の影響によるものである。

 少なくとも現代のアクア説を一般レベルで有名にしたエレイン・モーガンの著書からは、その影響はすでにはっきりと感じ取れる。

 このような緩い鯨類崇拝者には、純粋に科学的なアプローチがまだいくらか有効かもしれない。

 人類進化に関するまともな議論は他でいくらでも見つかるので今後特に取り上げることはないだろう。鯨類の進化に関しては鯨偶蹄目の話を見ればわかるように最近も進歩が続いている。

 また鯨類の脳の大きさに対するトンデモでない扱い方についてはカール・ジンマーの『水辺で起きた大進化』をお薦めする。これは後で本格的に取り上げるかもしれない。さて、次はいよいよ真打ち登場である。

*1:参考:良いトンデモと悪いトンデモは紙一重
*2:絶対と言えるほどの確信はない。もっと詳しい人がいたら教えてほしい。

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おまけ

 ちなみにサイは奇蹄目

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