知る人ぞ知る怪作。タイトルの時点ですでに何かが決定的におかしい。
内容も、輸入雑貨の貿易商を個人で営んでいる井之頭五郎という普通の男が、腹を空かして普通に食事をするというだけ。本当にただそれだけ。
藤子不二雄のSF短編で、食事と性行為に関する羞恥心の概念が逆転した世界に迷い込んでしまう男の話があった。(参考)
その世界では、食事は個体の維持にしか貢献しない利己的な行為だから、一人隠れてこっそり行う恥ずかしいものであり、性行為は集団の維持に貢献する利他的なものであるから、正々堂々とおおっぴらに行うべきである、とされている。
従って、その世界では歩きながらサンドイッチを食べるような気安さで路上性行為が行われ、「食事会」が現実世界における「乱交パーティー」に相当するものになっている。
どうもこれを読んでいると、そのSFは半分正しいのではないかという思いにとらわれる。
つまり、人間がものを食う時は一人なのが自然であり、それを克明に描写する――たとえばこの作品のように――のはエロティックな覗き行為であり、いわゆる普通のグルメマンガというのは、乱交パーティーのような倒錯した変態行為なのではないかと。
おまけ
個人的にはゴローちゃんネタといえばテクテクさんのイメージが強い。
by 木戸孝紀
tags:SF グルメ コミック 久住昌之 谷口ジロー
いつぞやの表現規制の件周辺で何度かタイトルを小耳に挟んだので読んだ。
- 『すばらしき新世界』
- 『1984年』
- 『エヴァ』
- 百合(公認)
って感じか。表現規制の件で引かれた文脈はまあわかった。
でも『すばらしき新世界』『1984年』の部分はそのまんま。『エヴァ』の部分は、読んだ人はわかると思うが、「老人」って言葉の使い方とか、結局人類補完計画かよとか。
元ネタに対するプラスアルファの部分が百合以外これといってインパクトなく、単独として面白いとは思えなかった。『虐殺器官』の方が面白いのかなあ。どうしよう。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:SF 伊藤計劃 書評 小説 文学
「サロゲート」と呼ばれる遠隔操作の義体を使って、生身の体は家で寝転んだまま仕事でもホビーでも好きに行うことができる技術が一般化した時代。
かつてダイハードな肉体で鳴らしたジョン・マクレーン刑事も、寄る年波には勝てず(主に髪が)、義体で捜査をしています。
奥さんとも相変わらずうまく行っていないところに、泣きっ面に蜂。「くらえッ! スタンド『フランケンシュタイン・コンプレックス』ッ!!」とばかりにとんでもない事件が起こります。
単なるサロゲート損壊事件と思いきや、それを操作している人間まで死んでしまっているのです。そもそも人間が絶対安全なのがウリなのに、これは一体どういうことなの。世界を揺るがす大事件に、ジョンはまたしても一人で立ち向かうのでした。
まあSF者なら一応見ている間は退屈しないでしょう。『アバター』と時期的に被ってしまったのが悔やまれます。ちなみに予告編はややネタバレくさいので見ないが吉。
おまけ
人力ロボつながり。
by 木戸孝紀
tags:SF ブルース・ウィリス 映画 義体
ここで言及したので、記憶に上ってきた。
多分一番有名な架空歴史ラノベ。ヤン・ウェンリーってユルいヒーローの先駆けなんじゃないだろうか。
ちゃんと読み直したわけじゃないが、今考えるといろんな意味で「911もオウムもソ連崩壊も起きてないときの小説だなあ」と思う。
「話の展開に詰まったらとりあえず原理主義的宗教のテロで誰か殺しとけ」みたいなことも、今じゃ逆にできないんじゃないかという気がする。
おまけ
今(再)アニメ化されたらこんな感じ……なわけねえか。
by 木戸孝紀
tags:SF ラノベ 書評 小説 歴史
今日までで516冊電子化した。まだ押し入れの中とかにもあるが、ずいぶん部屋が広くなった。これまでいかに本にスペースが占有されていたかが明らかに。
このデータが吹っ飛ぶとさすがに痛いので、この機会にと、以下のハードディスクケースとハードディスク×2を買った。これでraid1のディスクドライブを作って、バックアップ場所にすることにした。
裁断機は、高校の教科書にホッチキスの針が隠れているのに気づかず、一度針ごとやってしまった。裁断面に筋が走るようになっただけで実用的には問題ない。これからやる人は注意。
古い文庫本などの黄ばみ除去だが、『藤 -Resizer-』というソフトで、白黒化法の設定2にして、リサイズと同時にやってしまうのが楽だった。あっという間に綺麗になる。
付属のAcrobatでPDFにしてOCRをかければ、大まかだが検索もできるようになるし、リモートデスクトップで理論上世界のどこからでも読めるようになる。iPhoneでの閲覧も試みたが、GoodReaderというアプリを使って辛うじて不可能ではないが、厳しい感じ。
それにしても、こうして自分の人格形成に形成した本たちが、次々電子化されて元々のものより綺麗で便利になっていくところを見ていると、いずれグレッグ・イーガンの小説よろしく人間の精神それ自体も電子化される日がくるのだろうなと、またSFチックな空想が広がる。2010年だし。
おまけ
電子化つながり。懐かしいが時事ネタはすぐ風化するな。
by 木戸孝紀
tags:PC SF 裁断 電子化 日記
最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。
★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。
『軍事とロジスティクス』★★★
江畑謙介著。あまり知らない分野なので面白かった。
『死の接吻』のアイラ・レヴィン著。モダンホラーの先駆け的作品。映画が有名だが、小説はちょっといまいち。訳が悪いのだろうか。
『タウ・ゼロ』★
ポール・アンダースン著。今まであまり言われてるの聞いたことないのだが、ジョジョ6部プッチ神父のスタンドの元ネタってこれだよな? 作品自体は若干古いものの十分面白い。
『かくして冥王星は降格された―太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて』★★
ニール・ドグラース・タイソン著。原題”THE PLUTO FILES The Rise and Fall of America’s Favorite Planet”。『冥王星事件簿 アメリカが一番好きな惑星の隆盛と没落』ぐらいの意味合い。日本でも少しは話題になったが、アメリカでは全然インパクトが違ったんだということがよく分かる。なかなか面白い。
『クルマの渋滞 アリの行列 -渋滞学が教える「混雑」の真相』★
西成活裕著。初心者向き。読みやすい。
『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』★★★★
ダン・アリエリー著。内容そのものは類似の本がよくあるが、著者の人格に好感が持てる。かなり面白い。
『潜水調査船が観た深海生物―深海生物研究の現在』★★★★★
藤倉克則著、丸山正著、奥谷喬司著。これはすげー! 小さいころに生物図鑑を読んでいて感じたような、あのワクワク感とでも言うべきものが甦る。最高。
『研究する水族館―水槽展示だけではない知的な世界』★★
猿渡敏郎著、西源二郎。これもなかなか。
『科学がきらわれる理由』★★★★★
ロビン・ダンバー著。地下猫さんのおすすめ。原著が95年ということもあり、確かにわずかに古さは感じるが、話題の幅の広さと見識の深さは素晴らしい。厚さもそこそこに押さえられているし、啓蒙書として理想的。私もおすすめしておく。
『格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略 』★★★
ポール・クルーグマン著。アメリカ大統領選はとっくに過ぎて、日本の政権交代も終わっちゃったし、旬を逃した感があるが、結構面白い。
『進化論の射程―生物学の哲学入門』★
エリオット・ソーバー著。ポパーのあたりの話は、昔もっとずっと良い本を読んだ覚えがあるのだが何だったかな。思い出せない。最近こういうことが多い。歳で記憶が衰えたか、それとも歳で経験が増えてきた証拠か。
おまけ
時が加速していくつながり。
by 木戸孝紀
tags:SF 科学 軍事 経済 書評 小説 進化
山本弘つながりで読む。これは確かにすごく面白い。『神は沈黙せず』の時のような引っかかりもないし、迷わずおすすめできる。
弾さんみたいにベストフィクションとまでは言えないけれども、同じポジティブなAIネタを扱っても、宗教的伝統から来るフランケンシュタイン・コンプレックスからいまだ完全に自由でない(ように思われる)世界の最先端SF作品群に対する一石としての価値は十分あると思う。
あえて重箱の隅をつつくとしたら、以下の話か。重大なネタバレ含むので作品自体を読んでからどうぞ。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:AI SF 山本弘 書評 小説
良くも悪くもジャパニメーション版マトリックス。
良く言えばマトリックスから10年経ってようやく最新CGとアニメの融合を十二分に生かした作品ができたということだし、悪く言えば世界最先端から十年遅れているということ。ううむ、どう考えればよいのか。
素直に見れば単純にすごく完成度が高くて面白い。多少アニメ慣れして「お約束」みたいなものが分かっていることが前提とは思うが。
あとヒロインの印象が薄い。というか、どう見ても本作のヒロインは格ゲー少年の方です。本当にありがとうございました。ショタコン業界は大変なことになっているに違いない。途中であるキャラがエヴァの加持リョウジに似ていると思ったらキャラデザ貞本義行だった。要するにカヲル君のデザインと同じ人だ。ああ、ある意味納得。
おまけ
どうやったらこれがショタコンの語源になれるのかは全然納得できん。
by 木戸孝紀
tags:CG SF アニメ マトリックス 映画