冷徹な頭と温かい心 スティーヴン・レヴィット スティーヴン・ダブナー『ヤバい経済学─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

 こちらを見て購入したが大正解。確かに最近読んだ本の中では別格の面白さ。

 経済学の本というより「経済学者がその着眼点と手法でもって普段経済学が扱わない社会の事象を研究したらどうなるか?」を書いた本だ。

  • 学校の先生も相撲の力士もそれをするインセンティブがあれば八百長をする。統計データから見抜くこともできる。
  • KKKも不動産屋もその力の源は情報にある。正しい情報が知れ渡ってしまえば力を失う。
  • 麻薬を扱ってるギャングも帳簿を見ると会社と一緒。ただし儲けてるのはトップの一握りだけ。
  • プールのある家は銃のある家より危ない。
  • 子供の将来にはどんな子育て法を実行するかよりも親がどんな人間かの方が重要。
  • 子供の名前の流行は豊かな家庭から貧しい家庭に向かって流れる。
  • 犯罪減少の主要因は妊娠中絶の合法化。

 等々、見ただけで面白そうなトピックが並ぶ。

 どれも実際に面白いが、やはり白眉は犯罪減少の主因は妊娠中絶の合法化だという主張だろう。中絶反対が宗教原理主義と結びついて一定の勢力を持っているアメリカでは、はっきり言うにはけっこう勇気が要る主張なのだ。

 全体を貫く冷徹な頭と温かい心を感じるいい本だ。

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