原題 “Justice – What’s the Right Thing to do?”(『正義――何が正しいことなのか?』)NHKでハーバード白熱教室として放送されているらしい講義の書籍化。
歴史を足早におさらいする感じや、日本での流行り方からは、正義論に集中した『ソフィーの世界』、といった印象を受ける。
確かに流行るだけあって、大変よくまとまっていると思う。この分野の入門書としては最高だ。おすすめ。NHKの番組は未見だが、講義そのものはYouTubeで見られるらしいので、後でちょっと覗いてみよう。
ただ、邦題は内容に即していない。むしろ正反対だ。『これからの「正義」の話をしよう』とあるが、「これから」の話は、ほとんど何も出てきていない。単に内容を表すものとしては『これまでの「正義」の話をしよう』の方が適切だと思う。
この分野は今まさに、脳・神経科学および進化心理学の両面から革命が進行中で、この本にまとめられた現在までの議論は、ちょうど進化論以前の生物分類学のようなものになる可能性が高い。
決して価値がないという意味ではない。それはそれで素晴らしい壮大な知の体系なのだが、現実の問題を解決したり、さらなる進歩の元になったりするというよりは、歴史的研究の対象になるということだ。
参考リンク
- RDF(Richard Dawkins Foundation)講演ムービー – shorebird 進化心理学中心の書評など
- 読書開始 「Moral Minds」 – shorebird 進化心理学中心の書評など
- ジェフリー・ミラー「道徳への性淘汰」 – shorebird 進化心理学中心の書評など
参考動画
英語。[CC]ボタンから字幕(やはり英語)を出せるようになるようだ。
関連書籍
おまけ
ジャスティスつながり。
コメント
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学 著/マイケル・サンデル
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