以前詳細に紹介すると言った*1ものの、どれだけ先になるかわからないし、重要な部分が多すぎてほとんどそのまんまにならざるを得ないので、考えを変えて先におすすめだけしておくことにした。
要点は、人間特有の高度な知性・言語・芸術・道徳などは、クジャクにとっての尾羽のように、性淘汰における適応指標形質として進化したということだ。私は、この見方は基本的に正しいと考える。
20世紀第4四半期で最も重要な進化論の啓蒙書はおそらく『利己的な遺伝子』であろうが、この本は最終的にそれに匹敵するほどのインパクトを持って、21世紀第1四半期で最も重要な進化論啓蒙書になるのではないかと思う。
『利己的な遺伝子』は、20世紀を通じた進化論の発展を「遺伝子視点での進化理解」という観点からまとめたものだ。それは生命・死・生殖・子殺し・兄弟殺し・自己犠牲・共同体といった多くの重要概念に対する認識を、大きく・不可逆的に変えてしまった。
この本は性淘汰と信号理論の進歩、およびその人類進化の理解に対する適用をまとめたものだ。それは、我々の、人間・人間性・道徳・男と女・恋愛・言語・音楽・芸術といった多くの重要概念とその認識を、大きく・不可逆的に変えてしまうことになる。
もうひとつ重要なことは、「地球に、ひとたび生命が誕生すれば、やがて人間的*2な高度な知性が進化してくることは必然だったのだ」とする人間中心的な進化の見方を、さらに徹底的に否定することになるだろうということだ。*3
*1:参考:書評在庫一掃セール2009年5月版
*2:それがどういう意味なのかという疑問はひとまず置いて。
*3:これは『進化の運命』のエントリにも関連する話題。
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参考図書
おまけ
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