現在、私たちのまわりには、〈性〉に関する幻想の、数多くの鏡のカケラが散らばっている。そのうちの一片には全てを打ち破る愛の物語があり、また別の一片には徹底した支配・服従の物語がある。こちらには貞操の物語があり、あちらには快楽の物語がある。
かつてこれらの物語はそれぞれの鏡にまとまり、秩序だって、映すべき特定の人々を待っていた。しかし、今、それらの鏡はバラバラに壊れ、それぞれのカケラが、別のカケラの光を映して乱反射する。
時にその一片を拾ってそこに移る景色をなぞり、時にいくつものカケラから図像の輪郭を復元し、それから図像のゆがみを辿って排除すべき切片を、注意深くより分ける――この、〈性〉という幻想のカレイド・スコープ(万華鏡)の中で、そんなことがどれほど有効なのかはわからない。ひとつの図像を写し取ってみた途端、それはもうすでに形を変え始めるかもしれず、ある図像はもう、骨董品としての価値だけのためにそこに飾られているのかもしれない。それによしんば、このカレイド・スコープの中の全ての物語を解読できたところで、人はそれから完全に自由になれるわけではない。
だが、〈知る〉ことはそこから身を引きはがすための第一歩だ。私たちはすでにその探求の過程で、ありうべき新しい物語のほんのカケラなりと、見つけだすことができるだろうか?
なんとも説明しづらい内容。タイトルから想像されるよりかなり真面目。ちょっと文学的なフェミニズム論みたいな感じ? いや、それでは全然表現できてない気がする。いわゆる普通のフェミニズム本ではない。上の導入部を読んでもらえば少しだけ雰囲気が掴めるかも。とにかく、ものすごく面白かった。
東電OL殺人事件は外国人容疑者に対する扱いの問題としては知っていたけど、そんな側面もあったなんて夢にも知らなかったのでかなり驚いた。あと当然ながら、真面目なりにバリバリ18禁の内容を含むのでお子さまはご遠慮下さい。
おまけ
男と女。
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