久々にグレッグ・イーガンの短編集。やっぱり現代最高のSF作家と言われるだけのことはある。『TAP』『銀炎』『ユージーン』の3作は思想といい知識といいネタといい、この人らしさがよく出ていて私は好きだな。おすすめ。
『新・口笛テスト』
一度聞いたら絶対忘れない曲を計算で編み出す方法が発明された。星新一を連想させるコマーシャルネタ。まあまあ面白い。
『視覚』
撃たれた後遺症で常に主観的に幽体離脱状態になってしまった男。『脳の中の幽霊』でも読んだのかな。面白さはいまいち。
『ユージーン』
宝くじに大当たりした夫婦がちょっと怪しげなデザイナーベビー業者にかかろうとするが……そこに意外な展開が。面白い。
『悪魔の移住』
外にいるだれでもいい。思いやりというものを見せろ、あたしを殺しに来い。
から始まり全編一人称で語り通される話。面白い。
『散骨』
これはSF要素なし。普通にホラー。面白さも普通。
『銀炎』
内側から皮膚を剥がれるようになって死ぬ怖ろしいウィルス性伝染病。その謎を追っていくと遭遇する本当の恐怖。これもかなり面白い。
『自警団』
これもSF要素なし。普通にホラー。面白さはいまいち。
『要塞』
あからさまな移民排斥運動に隠れて気づかぬうちにもっと別の要塞が築かれているとしたら……どうだろう。『繭』の前身みたいな話か。面白さはそこそこ。
『森の奥』
ボスのカネをちょろまかして殺し屋に始末されそうなハッカーがすすめられた神経インプラントの効果は……。イーガン作品おなじみのガジェットだが、この作品自体はいまいち。
『TAP』
ある神経系の状態を丸ごと一つの単語のように伝達し、感じたり分析したりできる総合情動プロトコルTAP。あるTAP詩人の死を追っていくと、子供にTAPをインプラントすることの是非を巡る問題と意外な繋がりが……。表題作になるだけあってかなり面白い。
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おまけ
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