政治

科学技術哲学

ビョルン・ロンボルグ『環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態』

昨日の映画と、『生物多様性という名の革命』の山形浩生で思い出した。  要するに「このままではもうすぐ人類は滅亡する!」みたいな恐怖を煽るお決まりの話には眉に唾つけて、環境対策はリスクとコストとベネフィットを総合的に判断してやろうぜ、という話。  核融合エネルギーの実用化可能性について楽観的すぎたりとか、つっこみたくなるところはいくつかあるが概ねまともと言ってよい内容。  ただし、これに便乗したかの...
映画・ザ・ムービー

『POSTAL/ポスタル・ザ・ムービー』が予想外に神でやばい件につきまして

ポスタルという一部で有名な残虐洋ゲーのシリーズがございます。初代は単なる虐殺作業ゲーでございますが、二作目の『ポスタル2』は強烈な社会風刺がゲーム性と見事に結合して、ひとつの巨大なブラックジョークの塊となった世界を満喫できる、不謹慎ゲー史上稀に見る大傑作なのでございます。  史上とは言いましても、私はそもそもグロですとかホラーですとかは幼少の頃から大の苦手でございまして、まともにプレイできた残虐ゲ...
科学技術哲学

デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』

うむむ、もともとある下心を持って借りてきたのであって、良い本だと期待していたわけではないのだが、これではちょっとグダグダ過ぎて叩き台にも使えない。  amazonリンク先の山形浩生の書評にほぼ同意する。多様性擁護がこんなスピリチュアルしなくちゃできない議論だと思われたらかえって迷惑だ。 参考リンク 地球温暖化や生物多様性の発見から政治へ 『生物多様性という名の革命』 - leeswijzer: b...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ33 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 6/8

【第32回】 【目次】 【第34回】  前回でリリー博士に関しては最大の山場を越えたが、まだいくつか興味深い部分が残っているので『イルカと話す日』から抜き書き風に進めよう。 第一章 イルカに関する新学説の展開  イルカに関する学説を最初に記録したのはアリストテレスである。その著作『動物誌』の中で、アリストテレスはイルカに関して鋭い観察を数多く書き記しており、イルカが胎生であること、授乳すること、呼...
政治経済社会

前田高行『アラブの大富豪 』

“アラブの石油王”なんて表現はフィクションではお馴染み……かと言えばそうでもないな。イスラム圏なので文化の壁もあるだろう。そもそも本当の金持ちというのは、自分がいくら金を持っているかも、どのように運用しているかも秘密にするものだそうである。  まあ確かにそうだろう。近代的な会計制度によって財務がオープンになる企業を通して金持ちになるという私たちが当たり前だと思っているスタイルが、むしろ最近になって...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ32 人間の思考に対して働く時代精神の制約がいかに強力なものであるか

【第31回】 【目次】 【第33回】  歴史上存在した生物の由来に関する理論は、創造論と進化論のふたつだけというわけではない。  もちろんそれは最も重要な境目には違いないが、『種の起原』が出版されたと同時にスイッチが切り替わるように前者が後者に置き換えられ、以後そのままであるかのような印象を抱いているなら誤りだ。  それはあくまで第28回で少し触れたような、我々が歴史を理解しやすくするために必要な...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ31 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 5/8

【第30回】 【目次】 【第32回】  ではまた『イルカと話す日』の続きから始めよう。次の部分はちょうど第29回の引用部分の直後に続くもので、ガイア教徒の鯨類に関する中心信条とでも言うべきものである。  機会があれば後で実例もお目にかけるが、驚くべきことに――そろそろ驚かなくなってきていてもらえると嬉しいのだが――今日時点ですら、これをほぼそのまま信じている人は大勢いる。  このような考察を推し進...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ30 狂っているのは我々の歴史に対する感覚であって彼らの頭ではない

【第29回】 【目次】 【第31回】  前回で、ついに“脳”を介して歴史上三つの大いなる存在の連鎖が全て一本に繋がるところまで来た。いい機会なので少し俯瞰してまとめてみよう。  いつの時代も――少なくとも何万年という長きにわたって――ずっと変わらないものがある。それは、自分と自分たちの共同体が、宇宙の中で特別の歴史を持ち・特別の使命を帯び・特別の地位を占めていると信じたい人間の心である。  それは...