書評

政治経済社会

スアド『生きながら火に焼かれて』

“名誉の殺人”を有名にした何年か前のベストセラー。存在は知っていたがやっと読んだ。Sony Magazines CATCH BON!(公式立ち読み) 男女平等と女性の社会進出は、先進国でこそある程度当たり前のようになってはいるが、まだまだ女は産む機械で奴隷で家畜以下の扱いという地域はいくらでもあるわけだ。男の子牧場!?|サイバーエージェントではたらく広報担当のブログ こんな女性向け婚活サイトの命名...
文化芸術宗教

ショウペンハウエル『読書について 他二篇』

『思索』『著作と文体』『読書について』 ショウペンハウエルの三編を収録した薄い文庫本。引用はすべて『著作と文体』より。 書名は手紙のあて名にあたるべきものであるから、先ずその内容に興味を持ちそうな読者層に、その書物を送付する目的をもつはずのものである。だから、書名は独自の特徴をそなえるべきである。また短いことが書名の生命であるから、きわめて簡潔で含蓄豊かであるべきで、その上なるべくその本の内容に対...
文化芸術宗教

サビン・バリング=グールド『ヨーロッパをさすらう異形の物語―中世の幻想・神話・伝説』

監修の池上俊一氏からたどり着いた本。こういう事典的なものをがーっと読むのも中世ファンタジーも大好きなのでわりとツボにはまった。目次の項目を並べてみるとこんな感じ。さまよえるユダヤ人 永遠という罰の重みプレスター・ジョン 朗報かそれとも悪い報せか占い棒(ダウジング) なんでも見つけ出す魔法の棒エペソスの眠れる七聖人 復活する死者ウィリアム・テル 本当はいなかった弓の名手忠犬ゲラート 命の恩人は動物だ...
文化芸術宗教

山本弘『神は沈黙せず』

と学会の本は何冊か読んだことがあるが、山本弘の小説を読むのは実は初めてだったりする。 いかにもと学会っぽい蘊蓄が存分に活用されていて、面白いか面白くないかと言えば十分面白いけど、どうしても引っかかるものがある。なぜだろう。 おそらく作者が、主人公たちよりも悪役の加古沢の方に肩入れして自己同一視している――単に作品内のどのキャラも作者の分身のひとつだからというレベルの話ではなく――からだろうと思う。...
科学技術哲学

フランシス・コリンズ『ゲノムと聖書:科学者、〈神〉について考える』

『神と科学は共存できるか?』の頃からチェックリストには入っていたがやっと読んだ。感想は下の雨崎さんの感想にほぼ一字一句同意。 ほんとまじめなんですよ、この先生。自分の良心の落としどころを求めて、あれやこれや試行錯誤に調整を試みた末の、せいいっぱいの”有望な”神の延命計画を提案しているんですよ。インテリジェント・デザイン(ID)説に苦言を呈しーの、有神論的進化論を試しーの、バイオロゴスはどうかと打診...
科学技術哲学

エルンスト・ヘッケル『生物の驚異的な形』

グラン・トリノを見に行ったときに本屋で見かけて思わず目を疑った。有名なエルンスト・ヘッケルの画集が出ている。 邦題がすごく安っぽい印象になってしまっているが、原題"Kunstformen der Natur"は直訳すると『自然の芸術造形』である。 昔グールドのエッセイか何かで存在を知り、荒俣宏の世界大博物図鑑に載っていた放散虫の図をわざわざ図書館でコピーしたりした記憶がある。Ernst Haeck...
政治経済社会

ビョルン・ロンボルグ『五〇〇億ドルでできること』

コペンハーゲン・コンセンサスというものがある。 要するに、古典物理の原則に固執したり思弁を弄んだりするのはやめて、波動関数の収縮はとにもかくにも起きるのだという量子論的実験結果を素直に受け止めよう、ということ……じゃないそれはコペンハーゲン解釈。 要するに、世界に山積する重大問題をちゃんとした根拠とりわけ経済学の観点から評価して、優先度を見極めようぜという議論。『環境危機を煽ってはいけない』のビョ...
WEB情報通信

Joel Spolsky『More Joel on Software』

Joel on Software 『Joel on Software』の続編。webですでに読んだ記事や、これまで読んだ他の本と被る内容もかなりあったが、やはりどれも最高に面白くてためになる。 特によかったのはハンガリアン記法の話とソフトの差別化戦略の話とカスタマーサポートの話かな。IT関連の仕事をしている人や情報系の学生には絶対おすすめ。関連書籍おまけ ハンガリアンとITというと選択の余地なし。...