書評

文化芸術宗教

サビン・バリング=グールド『ヨーロッパをさすらう異形の物語―中世の幻想・神話・伝説』

監修の池上俊一氏からたどり着いた本。こういう事典的なものをがーっと読むのも中世ファンタジーも大好きなのでわりとツボにはまった。目次の項目を並べてみるとこんな感じ。さまよえるユダヤ人 永遠という罰の重みプレスター・ジョン 朗報かそれとも悪い報せか占い棒(ダウジング) なんでも見つけ出す魔法の棒エペソスの眠れる七聖人 復活する死者ウィリアム・テル 本当はいなかった弓の名手忠犬ゲラート 命の恩人は動物だ...
文化芸術宗教

山本弘『神は沈黙せず』

と学会の本は何冊か読んだことがあるが、山本弘の小説を読むのは実は初めてだったりする。 いかにもと学会っぽい蘊蓄が存分に活用されていて、面白いか面白くないかと言えば十分面白いけど、どうしても引っかかるものがある。なぜだろう。 おそらく作者が、主人公たちよりも悪役の加古沢の方に肩入れして自己同一視している――単に作品内のどのキャラも作者の分身のひとつだからというレベルの話ではなく――からだろうと思う。...
科学技術哲学

フランシス・コリンズ『ゲノムと聖書:科学者、〈神〉について考える』

『神と科学は共存できるか?』の頃からチェックリストには入っていたがやっと読んだ。感想は下の雨崎さんの感想にほぼ一字一句同意。 ほんとまじめなんですよ、この先生。自分の良心の落としどころを求めて、あれやこれや試行錯誤に調整を試みた末の、せいいっぱいの”有望な”神の延命計画を提案しているんですよ。インテリジェント・デザイン(ID)説に苦言を呈しーの、有神論的進化論を試しーの、バイオロゴスはどうかと打診...
科学技術哲学

エルンスト・ヘッケル『生物の驚異的な形』

グラン・トリノを見に行ったときに本屋で見かけて思わず目を疑った。有名なエルンスト・ヘッケルの画集が出ている。 邦題がすごく安っぽい印象になってしまっているが、原題"Kunstformen der Natur"は直訳すると『自然の芸術造形』である。 昔グールドのエッセイか何かで存在を知り、荒俣宏の世界大博物図鑑に載っていた放散虫の図をわざわざ図書館でコピーしたりした記憶がある。Ernst Haeck...
政治経済社会

ビョルン・ロンボルグ『五〇〇億ドルでできること』

コペンハーゲン・コンセンサスというものがある。 要するに、古典物理の原則に固執したり思弁を弄んだりするのはやめて、波動関数の収縮はとにもかくにも起きるのだという量子論的実験結果を素直に受け止めよう、ということ……じゃないそれはコペンハーゲン解釈。 要するに、世界に山積する重大問題をちゃんとした根拠とりわけ経済学の観点から評価して、優先度を見極めようぜという議論。『環境危機を煽ってはいけない』のビョ...
WEB情報通信

Joel Spolsky『More Joel on Software』

Joel on Software 『Joel on Software』の続編。webですでに読んだ記事や、これまで読んだ他の本と被る内容もかなりあったが、やはりどれも最高に面白くてためになる。 特によかったのはハンガリアン記法の話とソフトの差別化戦略の話とカスタマーサポートの話かな。IT関連の仕事をしている人や情報系の学生には絶対おすすめ。関連書籍おまけ ハンガリアンとITというと選択の余地なし。...
科学技術哲学

グレッグ・イーガン『TAP』

久々にグレッグ・イーガンの短編集。やっぱり現代最高のSF作家と言われるだけのことはある。『TAP』『銀炎』『ユージーン』の3作は思想といい知識といいネタといい、この人らしさがよく出ていて私は好きだな。おすすめ。『新・口笛テスト』 一度聞いたら絶対忘れない曲を計算で編み出す方法が発明された。星新一を連想させるコマーシャルネタ。まあまあ面白い。『視覚』 撃たれた後遺症で常に主観的に幽体離脱状態になって...
政治経済社会

浜野喬士『エコ・テロリズム 過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ』

シー・シェパードがあそこまでやる理由〜『エコ・テロリズム』 浜野 喬士著(評:栗原 裕一郎):日経ビジネスオンライン 上の記事で見てようやくこの分野の入門書として本当におすすめできる読みやすい本が出たかなと思って早速借りてきたが正解。 全体で200ページとちょっとの新書だが、変な陰謀論やポジショントークに陥ることなく、歴史的・思想的背景を幅広く取り上げている。 また参考文献の表記が非常に充実してお...