生物

科学技術哲学

面積重要

およそ意味のある現象は、常に何かと何かの境界で発生する。  人体は大雑把に言って複雑に折りたたまれた内臓表面であり、それらを構成する細胞は大雑把に言って折りたたまれた膜(表面)の塊だ。  脳みそに皺が寄っているのも、肺が肺胞に分かれているのも、小腸が絨毛でびっしりなのも、全ては表面積を増やすためだ。  パソコン環境の生産性を上げるには、CPUやHDDの能力を上げるより、モニタの面積を増やした方がし...
おすすめ書評まとめ

おすすめ本書評まとめ2012年4月版

『宇宙は何でできているのか』★★  村山斉著。元から好きな分野なので、自分にはやや物足りないが。いい。 『働かないアリに意義がある』★  長谷川英祐著。同上。 『超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか』★  リチャード・ワイズマン著。同上。 『「ひきこもり」だった僕から』★★★  上山和樹著。確か神無月サスケさんのツイートで知った。前半は2ちゃんまとめブログの実話もどきスレでも読んでるみたいでつ...
科学技術哲学

カリフォルニアのモノ湖でNASAが砒素生物発見

<速報>リンの代わりにヒ素をDNA中に取り込む微生物が見つかった - I’m not a scientist. DNAにヒ素をもつ生物の発見|むしブロ  分子生物学やってた者としては、このニュースだけは一言だけでも反応しておかないと。  Appleのビートルズコーの直後だったからか、これもズコーとか言ってる人がいるけど、これは全然ズコーじゃないよ。これはすごいニュースですよ。  どのくらいすごいか...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2010年11月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理-』★  まあ言いたいことはわかるし総論賛成なんだけど、どうもこの...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2010年9月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『犯罪の生物学―遺伝・進化・環境・倫理』★★★★★  D.C.ロウ著。これはいい。すごくいい。このテーマピンポイントでは、基本にして最高と...
科学技術哲学

カール・ジンマー『大腸菌〜進化のカギを握るミクロな生命体』

カール・ジンマーの本。彼の本はどれも最高に面白いが、今回も期待を裏切らぬ出来。  E.Coliすなわち大腸菌を案内役に、生命科学の基本・その歴史・社会的意義に至るまで幅広く扱っており、かつどの部分を取ってもレベルが高い。非常におすすめ。  一般向け科学啓蒙書として唯一の欠点と思われるのは写真の少なさだろうか。口絵に何枚かだけでもいいので、大腸菌の電子顕微鏡写真とか、鞭毛を動かす分子モーターのCGと...
科学技術哲学

苦痛の存在意義

「The Greatest Show on Earth」 その22 - shorebird 進化心理学中心の書評など 「The Greatest Show on Earth」 その23 - shorebird 進化心理学中心の書評など  shorebird氏の『進化の存在証明』*1についての記事を読んでいて思い出した。  以前  苦悩、あるいは私たちがそう呼ぶところの脳神経の働きなどはパンダの親指...
科学技術哲学

ベルンド・ハインリッチ『人はなぜ走るのか』

当たり前だと思うかもしれないが、人間はマラソンができる。誰でもというわけではないにしても、鍛えれば42.195キロ以上走ることができる。  そんなことができる類人猿は、人間以外にはいない。人間は投擲力に優れているという話は前にもあったたが、持久走力も大変優れているのだ。  ところが「人間は精神的に優れた動物であり、代わりに肉体は貧弱で非効率的である」という根拠のない伝統的偏見が根強く、なかなかその...