生物

政治経済社会

女性器切除か女子割礼か

エドワード・オズボーン・ウィルソン『知の挑戦―科学的知性と文化的知性の統合』 長谷川寿一 長谷川真理子『進化と人間行動』 ドナルド・E・ブラウン『ヒューマン・ユニヴァーサルズ―文化相対主義から普遍性の認識へ』  ここしばらくヒューマン・ユニバーサルの話題を並べていたのは何故かというと、ちょっと前*1に見かけた一連の女性器切除の話題に関して、一言だけ触れておきたいと思ったから。 女性器切除 ちょっと...
文化芸術宗教

ガチの信仰者の心理

私にとって、両親が全知全能の存在ではないと気づいた日の衝撃は、自分がいつまでも生きていられるわけではないと気づいた日の衝撃よりも大きかった。  こうした親に対する全能感は、ほぼ間違いなく、幼い頃には大抵の人間が持っているものだろう。  生まれたときから宗教教育を受けている人の中には、この全能感が消えるよりも早く、その対象が神に置き換えられ、生涯その衝撃なしで生きてきた人がいるのではないかと思う。*...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年11月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『クトゥルフ神話ガイドブック―20世紀の恐怖神話』★★  朱鷺田祐介著。クトゥルフ神話は今見ると非常に陳腐というか普通だけど、それはこれを...
科学技術哲学

マーリーン・ズック『考える寄生体―戦略・進化・選択』

『パラサイト・レックス』以来の面白い寄生ものを期待したのだが、どちらかというと進化医学ものだった。  面白さは普通。寄生ネタなら『パラサイト・レックス』、進化医学としては『病気はなぜ、あるのか』の方を先におすすめする。  1箇所だけ憶えておきたい箇所があったのでメモ。いつか詳細に紹介したいと思っている『恋人選びの心―性淘汰と人間性の進化』で使うかも。 鳥のさえずりは脳の特定の部分でコントロールされ...
科学技術哲学

エドワード・オズボーン・ウィルソン『知の挑戦―科学的知性と文化的知性の統合』

『社会生物学』で有名なエドワード・オズボーン・ウィルソンの本。  読んだのは大分前だが、下のシロアリの倫理のくだりをメモしたくてもう一度借りてきた。  人間が自明と思っている様々な倫理・道徳が、高い知能・複雑な社会から直接に出てくるわけではなく、進化や遺伝と不可分なのだということを言った、有名なたとえ話。 シロアリが現生種の社会レベルから文明を発展させたとしよう。たとえばオオキノコシロアリという、...
科学技術哲学

サイモン・イングス『見る―眼の誕生はわたしたちをどう変えたか』

視覚全般に関する本。質・量・ひろがり・まとまりどの基準を取っても最高クラスです。超おすすめ。 プロローグ 若さと老い 第1章 感覚の共同体 第2章 視覚の化学 第3章 どのようにして眼は可能になるのか? 第4章 適応する眼 第5章 見ることと考えること 第6章 視覚の理論 第7章 視覚能力を授けられた神経質なシロモノ 第8章 色を見る 第9章 見えない色 第10章 眼が見るということ エピローグ ...
科学技術哲学

ジョン・ホイットフィールド『生き物たちは3/4が好き 多様な生物界を支配する単純な法則』

ダーシー・トムソン以来のアロメトリーの話題から始まって、生物学・生態学に対する数学的・工学的アプローチに関する本としてなかなかうまいことまとまっている。  昔『ゾウの時間ネズミの時間』という本が流行ったけど、あの頃から比べるとまたかなり理論が進歩しているので、更新してみるのもいいのでは。おすすめ。  余談だが、この話をガリバー旅行記で説明した絵本を読んだような記憶があるのだが、情報を引き出せない。...
科学技術哲学

エルンスト・ヘッケル『生物の驚異的な形』

グラン・トリノを見に行ったときに本屋で見かけて思わず目を疑った。有名なエルンスト・ヘッケルの画集が出ている。  邦題がすごく安っぽい印象になってしまっているが、原題"Kunstformen der Natur"は直訳すると『自然の芸術造形』である。  昔グールドのエッセイか何かで存在を知り、荒俣宏の世界大博物図鑑に載っていた放散虫の図をわざわざ図書館でコピーしたりした記憶がある。 Ernst Ha...