生物

科学技術哲学

エルンスト・ヘッケル『生物の驚異的な形』

グラン・トリノを見に行ったときに本屋で見かけて思わず目を疑った。有名なエルンスト・ヘッケルの画集が出ている。 邦題がすごく安っぽい印象になってしまっているが、原題"Kunstformen der Natur"は直訳すると『自然の芸術造形』である。 昔グールドのエッセイか何かで存在を知り、荒俣宏の世界大博物図鑑に載っていた放散虫の図をわざわざ図書館でコピーしたりした記憶がある。Ernst Haeck...
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ニック・レーン『ミトコンドリアが進化を決めた』

『生と死の自然史―進化を統べる酸素』の続編に当たる本。真核生物とミトコンドリアの進化的起源老化とフリーラジカルとミトコンドリアとの関わり内温性(温血)生物のスケーリング則 など。前著からわずかの期間にも次々と知見がアップデートされている感があってとてもエキサイティングだ。老化に関しては統一的に予防や治療ができるようになる可能性が十分あるのは確からしい。現在のところは、頭や体をよく使うようにすればす...
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ニック・レーン『生と死の自然史―進化を統べる酸素』

0.予習 予告しておいてから随分間が開いたが、久しぶりに相当面白い本に当たったので紹介する。すごくオススメである。続編にあたる『ミトコンドリアが進化を決めた』も都合がつき次第読みたいと思っている。 まず、絶対に必要というわけではないが以下のエントリの内容を踏まえておいた方がもっと面白いと思う。ピーター D.ウォード『恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた』ガブリエル・ウォーカー『...
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アルフレッド・W.クロスビー『ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10~20世紀』

アルフレッド・クロスビーつながり4冊目。それなりに面白かったが、『銃・病原菌・鉄』とほぼ完全に重複する内容であり、そちらの方が時代的にも後でより洗練されているので『銃・病原菌・鉄』を読んだことがある人は、差分の分しか面白くないかもしれない。訳者あとがきより。 本書の原題はEcological Imperialism: The Biological Expansion of Europe, 900-...
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ニール・シュービン『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト―最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅』

ティクターリク(Tiktaalik)の発見者が書いた本。とは言っても話はティクターリクだけに留まらず、魚類から四肢動物への進化の過程エボデボ(発生生物学+進化生物学)人類と他の生物が祖先を同じくすることの意味 と、多岐にわたる。それぞれについては関連図書にあげたような本の方が詳しいが、その全てが約300ページ・2000円とかなり圧縮してまとまっている。すごくいい本だと思う。今まで興味がなかったよう...
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トム・カークウッド『生命の持ち時間は決まっているのか―「使い捨ての体」老化理論が開く希望の地平』

『生と死の自然史―進化を統べる酸素』のための予備知識二冊目。1.なぜ老いるのか 人間の寿命の信頼できる最高記録は120年とちょっとである。不老不死は今も昔も究極の夢であるが、そもそも生物はなぜ老いるのか? 老化は極めてありふれた現象であるにもかかわらず、実はこの問いに完全な答えは未だ得られていない。 「細胞は常に損傷に晒されているんだからいずれ劣化するのは当たり前じゃないの?」などと言ってみたとこ...
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河井智康『消えたイワシからの暗号―七人の研究者と魚類五億年目の謎』

このものすごいタイトルを見て超絶したトンデモ本を期待して借りたのに、意外にもまともな水産学本だった。 妙に力の入った言い回しを好む人らしく、ところどころかなり変なことも言っているが本筋にはあまり関係ない。ちょっと残念(笑)。おまけ【ニコニコ動画】初音ミクねんどろいど到着記念「おさかな天国」
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佐藤克文『ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待』

はるばる南極まで行ってアザラシやペンギンやウミガメにデータロガーと呼ばれる小型のハイテク装置をくっつけて後で回収し、位置・温度・水圧、時には映像まで、様々なデータを集めて、これまで明らかになっていなかった生物の海中生活を明らかにする……。 「何勘違いしてるんだ? 博物学はまだ終了してないぜ!!」 とばかりにバイオロギングという新しい研究手法を熱心に紹介する本。著者の人柄の良さと科学に対する愛情が節...