科学

科学技術哲学

フリーマン・ダイソン『多様化世界―生命と技術と政治』

『ガイアの素顔』をきっかけにフリーマン・ダイソンを読み直していたのだが、何年かぶりに読み返したこの『多様化世界』はやはりすごい。  ソ連崩壊などで古くなった――もっとも初めて読んだときにもすでにソ連は崩壊してたが――部分はもちろんあるが、少々の古さなどものともさせないパワーがある。私の価値観形成にもかなり影響を与えている重要な本である。  今後何かの機会に引用したくなりそうな部分も結構あるし、何よ...
科学技術哲学

2007年ブログネタ在庫一掃セール「本」編

今年読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、紹介タイミングがないままの本をまとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度を表す。人に薦める価値もないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。十分おすすめである。 『彼らが夢見た2000年』★★  アンドリュー・ワット著。1900年の人間は2000年の世界をどのように想像したか。 『見えざる左手―もの...
科学技術哲学

チャールズ・サイフェ『宇宙を復号する―量子情報理論が解読する、宇宙という驚くべき暗号』

考え出された当初は予想もしなかった物事にまで応用されるというのは理論の価値の最高の証明であるが、その点でクロード・シャノンの情報理論は比類ないものであろう。  熱力学・生化学・宇宙論・量子力学・相対性理論などを情報理論との関連という切り口からまとめた良書。若干求められている前提知識が高めな気がするがかなりおすすめ。 科学なニュースとニュースの科学:この本読んだ? 2007年注目の科学ノンフィクショ...
科学技術哲学

スティーヴン・ウェッブ『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス』

町村官房長官「UFO絶対いると思う」(産経新聞) - Yahoo!ニュース  UFOだけなら「未確認飛行物体の略ですから確認されていない飛行物体が存在するのは当たり前です」とか言い逃れられたけど、ナスカの地上絵がどうとか言っちゃってるから普通にトンデモ発言だな……。ペルー国民よ怒っていいぞ。  さて、地球にUFOが来てるという認識はあからさまなトンデモだが「宇宙に人間以外の知的生物がいるか?」とい...
科学技術哲学

フリーマン・ダイソン『ガイアの素顔―科学・人類・宇宙をめぐる29章』

フリーマン・ダイソンは「ガイア」を語ってもアホに聞こえない稀なる人間。  個人的に、日本で紹介されるときよく「ダイソン球で有名な〜」とか付け加えられるのがいまいち気にくわない。あれは本人も言っているように『スターメイカー』が出典でダイソンのアイデアなわけじゃなく、別にSFに関係なく単純に現代最高の知性の1人なのに。  恥ずかしながら、今回英語版のWikipediaでテンプルトン賞を受賞しているとい...
政治経済社会

アドルフ・ヒトラーは二重らせんを知らずに死んだ

『我が闘争』を初めて読んだのは中学3年か高校生1年ぐらいの時だっただろうか。  読む前は何となく期待していた。なんと言ってもヒトラーといえば公認世界一わるいひと*1じゃあないか。まっとうな中学生男子を慰めてくれるぐらいのとんでもないことが書かれているはずではないか?  しかし、期待は裏切られた。あまりにも面白くないのである。*2面白くなかったのでほぼすべての内容を忘れてしまっているのだが、ただ一箇...
科学技術哲学

ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』

プラトンの『国家』と共通点のある本。その共通点とは、初めて読むとき最初の一章を飛ばせ! 必ず飛ばせ! というもの。  最初の一章がアメリカのモンタナ州の話なのであるが、これが本の中で一番、そして唯一、実につまらないのである。  アメリカ人なら自国の話から入ることによって興味が沸くのかもしれない――少なくとも著者の意図はそうだろう――が、アメリカ人でないのなら絶対に次のイースター島の章から読み始める...
科学技術哲学

スティーヴン・ジェイ・グールド『神と科学は共存できるか?』

誰だつまらないとか感心しないとか言ってるのは。十分面白いじゃないか。まあ確かにグールドの本の中では、一番つまらないのは認めざるをえない。個人的には『2000年問題』よりは面白かったが。  しかし、題材が題材である。なんと言ってもこれは何百年も前から確立している道徳原則と科学哲学の再確認に関する本なのだ。およそ本の題材として――何の題材としても――これ以上つまらないものがこの世にあろうか。  思えば...