ウィズの戦闘は基本的に敵を1ターンで無力化させることが前提となっている。クリティカルヒット*1やエナジードレイン*2を持つヤバイ敵は大抵単体で出てくるので、戦士系の攻撃を集中する。
全体攻撃系魔法を唱えてくる魔導師系のグループはモンティノ*3で黙らせ、それでも無力化し切れない場合はこちらの魔導師に全体攻撃魔法を使わせる*4という具合にである。
そして2ターン目以降は消化試合なのが普通である。逆に無力化に失敗すると大損害を受ける。不意打ちだと一発で全滅ということもある。つまりMP消費を抑えつつ敵を無力化するのに十分なように6人の行動を割り振るところがウィズの戦闘の醍醐味なわけだ。
ウィズの殺るか殺られるか一発勝負的な戦闘に対してドラクエの戦闘はやや趣が異なり、2ターン続くことが前提となっている。「2ターン程度続く」という点では同じに見えるが内容は異なる。
敵が一発でリセットまたは町まで退却となるような致命的な攻撃はしてこないので、1ターンでの敵無力化は*5要求されない。おまけにウィズと違って回復魔法もかなりの回数使える。
ウィズの主人公の立場で見ればこんなの八百長試合だ。さらにドラクエ以降のRPG*6では回復アイテムがいくらでも持てたり、MP回復アイテムがタダ同然で買えたり、全員を回復するような魔法がバンバン使えたりする。
ではRPGはウィズ以来バランスが悪くなる一方だというのか。もちろん違う。バランスを取っている範囲が違うのだ。ウィズではダンジョンに入ってからまた町に帰還するまでがバランスを取る範囲である。それによって帰りの道のりを常に計算に入れながら探索する緊張感がもたらされる。
ドラクエではリレミトやルーラがあるので帰還不能はない代わりに、毎回の戦闘でダメージを受けることで緊張感を出す。もちろんこっちが死ぬ前に戦闘は終わり、僧侶がベホマ唱えてめでたしめでたとなることが前提とされている。つまり一回の戦闘の開始から終わりまでがバランスを取る範囲というわけだ。
こうした日本型RPGではプレイヤーはどんどん先に進んでイベントを見ることを求めており全滅は期待されない。にも関わらず緊張感のある戦闘を作るためのバランス取りは至難だ。そこでバランス調整を手抜きする方法を考えたくなる。
実際は死ぬ心配はないのにピンチに陥っているという錯覚を与えるにはどうしたらいいだろう。ピンチに陥ってる感じを出すにはいっぱいダメージを受ければいい。実際死んでしまわないためにはいっぱい回復すればいい。
極端なことを言えば1ターンごとにバランスを取ってしまえば調整は簡単だ。敵の攻撃力を主人公たちが一発では死なない程度にしておくだけでいい。こうして敵が全体攻撃を繰り出し、味方の1人が全回復魔法を唱え残りが攻撃……を延々と繰り返すというパターンが生まれる。たとえばFF3のくらやみのくも戦などが典型的だ。
コメント
非常に興味深く読めました。面白かったです。が、私も、個人的にはですが、もう少し欲しいと思いました。
例えコマンド制だとしても、典型的なRPGの戦闘パターンの例からは外れてるけど名作なゲームはいくつもあるので、そういうのを含れば、もうちょい包括的なことが言えるのではないかと思ってしまいました。(私にはそんな高レベルな議論、どだい無理ですが。)
あと、FC版FF3の「くらやみのくも」の場合、波動砲のダメージが1000以上なのに対し、こちらの「ケアルガ」は全体にかけたときの回復量が600程度だったと記憶してます。かなり昔の記憶ですが。なので、「くらやみのくも」に関しては、そういう繰り返しパターンは使えないと思います。
>あああさん
最高の褒め言葉でございます。
WIZフリークはキモイやつらばかりだな
このRPG戦闘論は面白いですね。
結構的を得てますが最近のRPG
はコマンド制とは限らないので
もう少し欲しい所です。
それにしてもWizを知ると1戦闘は即決20秒でつかないと
イライラします。
いやあWizの中毒性は長い長い。