科学技術哲学

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グレッグ・イーガン『プランク・ダイヴ』

久々にグレッグ・イーガン。様々な時期の作品を集めた短編集。  後に『ディアスポラ』の一部になった『ワンの絨毯』が、単体でもやっぱり群を抜いた出来。他は正直微妙。  まあそれでも届いた途端に一気読みしちゃうぐらいには面白いのだが。 「クリスタルの夜」 「エキストラ」 「暗黒整数」 「グローリー」 「ワンの絨毯」 「プランク・ダイヴ」 「伝播」 おまけ 【ニコニコ動画】PS2版『怒首領蜂 大往生』 デ...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ35 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 8/8

【第34回】 【目次】 【第36回】  さて長かった*1『イルカと話す日』の本文も、ついに今回が最後である。名残を惜しむとともに、抜かりなくここまでのまとめと今後の展望についての準備を始めよう。 第一〇章 生態系の一員としての自覚を持った科学的観察者  これまで科学者といえば、実験を行ない、こうした実験から自分なりの推論を引き出し、学術論文を発表する者のことであった。(中略)科学者は、学術誌や学会...
ガイア教の天使クジラ

ガイア教の天使クジラ34 ジョン・C・リリー『イルカと話す日』 7/8

【第33回】 【目次】 【第35回】  前回から3年弱も間が開いてしまったが、何事もなかったように再開しよう。あと2回ほど『イルカと話す日』を続けたあと、リリー博士のまとめに入る。 第三章 クジラ類との異種間コミュニケーションに必要な諸科学  一九五五年から現在までのあいだに、異種間コミュニケーションを実現するためには、事実や理論を理解するためにさまざまな科学が必要だということが明らかになった。こ...
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エドワード・O・ウィルソン『人間の本性について』

エドワード・オズボーン・ウィルソンのピュリツァー賞受賞作。内容はタイトル通りで、賞に相応しい素晴らしさ。  私が生まれた年の本だが、いま見てもそれほど古びていない。問題になりそうなほど古いのは、同性愛を擁護するのにヘルパー説に頼っているところぐらいか。  同じ人間が『創造』みたいなすっとこどっこいな本を書いたとは、なかなか信じられないほどだが、この本のラストには、それに繋がった問題意識がすでに見ら...
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ジェームズ・ロバート・ブラウン『なぜ科学を語ってすれ違うのか――ソーカル事件を超えて』

東大生協で見かけて、あまり期待せずに読書リストに突っ込んでおいたものだったが、予想外に素晴らしかった。  ソーカル事件に関するものの中では、『知の欺瞞』そのものは別として、私の知る限り一番いい本だと思う。  いま何やかやで時間をかけられないので、内容そのものには詳しく触れられないが、このあたりの問題に興味のある人には、強くオススメしておく。 参考リンク なぜ科学を語ってすれ違うのか:みすず書房 海...
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ニコラス・ウェイド『宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰』

原題"THE FAITH INSTINCT"。スティーブン・ピンカーの"THE LANGUAGE INSTINCT"(『言語を生みだす本能』)を意識して、その向こうを張ったものだ。  宗教を生み出し運用する能力は、言語を生み出し運用する能力と同じく、集団を内部で結束させ、他集団との戦闘などで有利にするために、進化によって積極的に選択された本能であり、何かの副作用でたまたま生じたわけではない。  と...
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フリーマン・ダイソン『宇宙をかき乱すべきか〈下〉』

上巻に続いて下巻から、クリーンエネルギー関連の話題。  短絡的な善悪二分法は害悪であり、短いスパンの現実と長いスパンの理想は両立しうるし、させねばならない。  今日の状況の参考にすべき部分は多いと思われる。 21 銀河系の緑化  なぜわれわれは、グレーは悪でグリーンは善だと単純に言うべきではないのか? グリーンな技術を奉じグレーなあらゆるものを禁ずることによって救済への近道をとろうとすべきではない...
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フリーマン・ダイソン『宇宙をかき乱すべきか〈上〉』

星新一とフリーマン・ダイソンは、いつ読み返しても何かしら新しい発見がある。  停電ネタで星新一を続けてやったので、今度はダイソンの自伝『宇宙をかき乱すべきか』の上下巻からそれぞれ一箇所ずつ抜粋する。まず上巻から原発についての話題を。  要約すると、巨大さそのものがひとつの失敗だという意見だ。『多様化世界』の中の「迅速を尊ぶ」の章にも近い意見がある。  ちなみに、1979年の本なので、福島原発事故は...