宗教

科学技術哲学

エドワード・O・ウィルソン『創造―生物多様性を守るためのアピール』

エドワード・オズボーン・ウィルソンが、科学とキリスト教が協力して生物多様性の保護に取り組もうと、仮想の南部バプティスト派牧師に対し訴えかける、という本。  はっきり言って、試みそのものが成功しているとは全く思えない。当たり前だが、ウィルソンは神の創造は嘘で進化が事実であるということについては一歩も譲る気はないわけで、牧師にとっては、 「私たち科学者は、君たち牧師が一番大事だと信じていることが全くの...
科学技術哲学

空飛ぶスパゲッティモンスター

うろおぼえだが、昔読んだユダヤジョークの本に、確かこういう話があった。 (強制収容所にて) 看守「ドイツ*1をダメにしやがったのは誰だ!」 囚人「はい! ケーキ屋とユダヤ人です!」 看守「……なんでケーキ屋なんだ?」 囚人「……なんでユダヤ人なんです?」  世の中にはしばしば、何かがないことの証明が不可能だということ*2に依拠する一見もっともらしい主張があって、倫理的にもろくでもないことが多い。 ...
文化芸術宗教

グレッグ・イーガン『順列都市』から2点抜粋

グレッグ・イーガン『順列都市』から、後々話に使いたいと思っているところ2点を、最低限の説明をつけて抜粋。 《なにも変えない神の教会》  マリアは話しつづける。「『神はなんの違いももたらさない……なぜなら、神こそは万物がいまある姿をとっている理由だからだ』、ですっけ? だから、あたしたちはみんな、宇宙を心静かにうけいれられるってわけね?」  フランチェスカは首を横にふった。「心静かに? いいや。そう...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2010年1月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『キサラギ』★★★ キサラギ レビュー - レブログ!  D.IKUSHIMAさん経由。確かになかなか面白い脚本だ。映画も機会があったら見...
文化芸術宗教

教皇庁文化評議会/教皇庁諸宗教対話評議会『ニューエイジについてのキリスト教的考察』

ニューエイジについてのキリスト教的考察(公式)  ニューエイジが日本人にとって極めて理解しにくい理由は、それが基本的に西洋思想、とりわけキリスト教と近代科学に対するアンチテーゼだからだ。  ある程度まで当たり前で、仕方のないことだが、日本人はキリスト教についてよく知らない。*1「○○」をろくに知らないのに「○○への反発」を正確に理解できるはずがない。  そこを上手いこと補うために推薦できるいい本が...
文化芸術宗教

蔡志忠 野末陳平『マンガ 禅の思想』

昔見たあるコマを利用したくて再読したついでに。  禅問答というのは、通俗的には訳のわからん問答の代名詞的に使われていますが、実際にもやっぱり訳のわからん問答です。  いくら「二元論的な思考を乗り越えるための」とかなんとか理屈をつけてみても、結局やってることは  「全然違う! まったく逆! お前は何も悟ってない!」  とお互い言い合って、気圧された方が負けというだけなのです。  ……あれ? 意外と現...
科学技術哲学

リチャード・ドーキンス『進化の存在証明』

はーい皆さん、グールド亡き今世界一有名な進化論啓蒙者であり、人格的には割とクソ野郎なドーキンスの兄貴の新刊のお時間です。  今回のテーマは非常に明解。進化は事実だということ。  「……それはギャグで言ってるのか?」と思うでしょうが、旧約聖書の創造論をまんま事実として信じている人間が今でも大勢いて、一定の政治力を保っている欧米の読者を主な対象としているので、そこは割り引いて考えて下さい。*1  個人...
文化芸術宗教

ガチの信仰者の心理

私にとって、両親が全知全能の存在ではないと気づいた日の衝撃は、自分がいつまでも生きていられるわけではないと気づいた日の衝撃よりも大きかった。  こうした親に対する全能感は、ほぼ間違いなく、幼い頃には大抵の人間が持っているものだろう。  生まれたときから宗教教育を受けている人の中には、この全能感が消えるよりも早く、その対象が神に置き換えられ、生涯その衝撃なしで生きてきた人がいるのではないかと思う。*...