書評

政治経済社会

ジョン・ホバマン『アメリカのスポーツと人種』

ボルトが異次元の世界新 100M9秒58で優勝  に関連して、 人種差別問題でオススメの本3冊  に追加しておいた方がよいと思う本を紹介しておく。  白人と黒人両者が人種的運動能力に関する調査を恐れているのは、それが知力や情緒に関わるもっと内面的な人種的差異を示唆するからである。科学者と一般人のいずれも、人種的な身体構造や生理についての本音を隠し続けているので、両者の不安は解消することがない。こう...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年8月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険』★★★  鈴木光太郎著。懐疑本としてなかなかおすすめ。 『オオカミ少女はいなかった ...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年7月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『自分をつくりだした生物―ヒトの進化と生態系』★★★  ジョナサン・キングドン著。先史人類とそのテクノロジーが環境といかに相互作用してきた...
科学技術哲学

ジョン・ホイットフィールド『生き物たちは3/4が好き 多様な生物界を支配する単純な法則』

ダーシー・トムソン以来のアロメトリーの話題から始まって、生物学・生態学に対する数学的・工学的アプローチに関する本としてなかなかうまいことまとまっている。  昔『ゾウの時間ネズミの時間』という本が流行ったけど、あの頃から比べるとまたかなり理論が進歩しているので、更新してみるのもいいのでは。おすすめ。  余談だが、この話をガリバー旅行記で説明した絵本を読んだような記憶があるのだが、情報を引き出せない。...
政治経済社会

E.F.ロフタス K.ケッチャム『抑圧された記憶の神話―偽りの性的虐待の記憶をめぐって』

ひいいいいいいい!!! 怖い怖い怖いうぎゃああああ! ホラー小説でもこんな怖い本は滅多にない。事実は小説より怖いナリ。ああああ怖さを紛らわそうとするあまり思わずコロ助口調になってしまったナリよ!  出っ張ったものは何でも男性器の象徴・引っ込んだものは何でも女性器の象徴にしてしまい、何でも幼少期のトラウマで説明してしまう傾向のあったフロイト。  その流れを汲む心理学は、1980年代から1990年代に...
科学技術哲学

ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体』

あなたの住んでいるスペースコロニーが何かのはずみで、物理法則は同じだけど他に何もないからっぽの宇宙に一個だけ迷い込んでしまいました。  さて、このコロニーは自転によって人工重力を維持することが、 できる(他に何もなくたって空間に対して回転してるんだからできるよ!) できない(他に何もなければ回転しているという概念には意味がないのだからできないよ!)  どっちだかわかります? 自信持って答えられる人...
文化芸術宗教

テッド・チャン『あなたの人生の物語』

グレッグ・イーガンと並び称されているテッド・チャンの短編集。個人的にはイーガンの方が好きだが、かなり面白かった。  イーガン作品に通底するテーマが「自己同一性とは何か?」だとすれば、チャン作品に通底するテーマは「絶対的に隔絶した存在といかに向き合うか?」*1というものだ。  その隔絶した存在は、作品によって、神だったり・異星人だったり・未来だったり・超人類だったり・数学だったりするけども。 『バビ...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年5月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『パノラマ島綺譚』★★★★  江戸川乱歩:原作/丸尾末広:画。これ以上ありえないぐらいはまってる組み合わせ。 『顔は口ほどに嘘をつく』★★...