社会

科学技術哲学

小山重郎『よみがえれ黄金の島―ミカンコミバエ根絶の記録』

トラウマの話をしていたら別の思い出が甦ってきて、反射的に検索かけて注文してしまった。私の人生最初の、ものすごく面白かった記憶が残っている科学の本が、これなのである。今読み返しても素晴らしく面白い。  子供向けシリーズとはいうものの内容は高度で、虫の生態から、フェロモン様の誘引物質を使う方法、放射線で不妊化した雄を放す方法まで多岐にわたる。しかし、それを図表・グラフ・写真・地図などを豊富に使って平易...
科学技術哲学

脳は陰謀論を生む機械

分離脳についての実験からは「説明装置」とでも呼ぶべき機能が左脳側にあることが示唆される。たとえ(分離脳の状態になければ右脳から送られたであろう)正しい情報がなくても説明装置はとにかく結論を出す。  端から見ている実験者の立場ではそれはどう見ても作話であるのだが、どうも(少なくとも言葉で説明ができるような)自我は、脳で働いている様々なモジュールがそれぞれ高度に専門化された仕事をこなした後の最終結果し...
文化芸術宗教

土居健郎『「甘え」の構造』

英語には日本語の「甘える」に相当する言葉がない、という話から始まる日本論。Wikipediaにも項があるようなベストセラーだったそうだが最近まで知らなかった。私にはやはりこれは日本論というより裏返しの一神教論として読めてしまう。  たとえば浄土真宗では他力本願といって、自己の力で悟りを開いて成仏するなどという考え方は捨てて、ただ阿弥陀如来の力にすがるべし、というようなことを強調するわけだが、思えば...
科学技術哲学

ビョルン・ロンボルグ『環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態』

昨日の映画と、『生物多様性という名の革命』の山形浩生で思い出した。  要するに「このままではもうすぐ人類は滅亡する!」みたいな恐怖を煽るお決まりの話には眉に唾つけて、環境対策はリスクとコストとベネフィットを総合的に判断してやろうぜ、という話。  核融合エネルギーの実用化可能性について楽観的すぎたりとか、つっこみたくなるところはいくつかあるが概ねまともと言ってよい内容。  ただし、これに便乗したかの...
文化芸術宗教

エーリッヒ・フロム『愛するということ』

『自由からの逃走』からエーリッヒ・フロムつながりで読んだ。“愛”についての本。内容は参考リンク先が充実しているので繰り返さない。  面白いけど原著が1956年というだけあって、とても時代を感じる。今日時点で、  社会の未開人的自然崇拝的な愛からキリスト教的な愛への成長を、個人の母性的愛から父性的愛への成長になぞらえる  なんてことをやったら「二重三重の意味でPCでない!」と怒られるんではなかろうか...
科学技術哲学

デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』

うむむ、もともとある下心を持って借りてきたのであって、良い本だと期待していたわけではないのだが、これではちょっとグダグダ過ぎて叩き台にも使えない。  amazonリンク先の山形浩生の書評にほぼ同意する。多様性擁護がこんなスピリチュアルしなくちゃできない議論だと思われたらかえって迷惑だ。 参考リンク 地球温暖化や生物多様性の発見から政治へ 『生物多様性という名の革命』 - leeswijzer: b...
科学技術哲学

デーヴ・グロスマン ローレン・W・クリステンセン『「戦争」の心理学 人間における戦闘のメカニズム』

『戦場における人殺しの心理学』の実践編みたいな位置づけの本。前作と共通部分が多いので、普通の人は前作のみで十分かもしれない。逆に自衛隊員・警察官・SP・警備員・消防士といった職業の人は自腹切っても読むべきだと思う。  いや……自腹というか、配られて然るべきなんじゃないのか? そもそも日本の自衛隊や警察では、ちゃんとこういう最新の研究成果に基づいた教育と訓練が行われているのだろうか? 根拠はないが絶...
科学技術哲学

パスカル・ボイヤー『神はなぜいるのか?』

原題は『説明される宗教』(Religion Explained)。原題の方が内容に忠実だ。全体の趣旨は私なりに思いっきり要約するとこう。 従来の説明 宗教は説明を与える。 宗教は安らぎを与える。 宗教は社会に秩序を与える。 宗教は認知的錯覚である。  これらはみな一理あるが不十分である。このような現在「宗教の特徴」と言われて思いつくようなものは、いくつかの大宗教の特徴であるに過ぎず、宗教全体の中で...