社会

政治経済社会

スディール・ヴェンカテッシュ『ヤバい社会学 一日だけのギャング・リーダー』

『ヤバい経済学』の一部の元ネタになったギャング研究の回顧録みたいなもの。『ヤバい経済学』とは全然趣が違うので同じようなものを期待するべきではない。  内容そのものも興味深く、いろんな読み方ができる作品だが、すでに方々で書かれているので他に譲る。  私が惹かれるのは、shorebirdさんが言及している どこかで終わってしまうことがわかっている物語が醸し出す不思議な雰囲気 (書評 「ヤバい社会学」 ...
科学技術哲学

スタンレー・ミルグラム『服従の心理』

よく教科書にも載ってる有名なミルグラム実験の本。スタンレー・ミルグラムはスモール・ワールドの概念の先駆者としても有名。  一応、旧版で読んだような記憶はあるが、 「服従の心理」はスゴ本: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる  で、山形浩生氏の批判というのに興味を持った。  確かに、山形氏の批判は、どれもいいところを突いていると思う。この実験の今日的な解釈として同意できる部分が多い。...
政治経済社会

歴史の振り子と螺旋階段

政治や文化の歴史は、振り子のように左右に振れるというが、この人口に膾炙したイメージは、いささか単純すぎると思う。  歴史は一度きりの現象で、決して繰り返したりはしない。もちろん、 歴史は同じようには繰り返さないが、韻を踏む。 The past does not repeat itself, but it rhymes. (マーク・トウェイン - Wikiquote)  という言葉がすでにあるが、振...
政治経済社会

リチャード・E. ニスベット ドヴ・コーエン『名誉と暴力―アメリカ南部の文化と心理』

『みんなの進化論』で言及されていて面白そうだったので読んだ。以下は超要約。  アメリカ南部の文化が、端的に言ってマッチョ的だというイメージは広く知られている。しかし、南部人は単に何に関しても暴力的というわけではない。自分自身や女性親族の「名誉」を守るという文脈で、特に暴力を許容する傾向がある。  よく言われてきた「奴隷制のせいで良心が摩滅しちまったんだよ」という類の説明は、「社会制度が暴力肯定を助...
映画・ザ・ムービー

『JUNO/ジュノ』 オススメ度 8/10

映画「JUNO/ジュノ」オフィシャルサイト  どこかで見た評判がものすごくよかったので借りたカナダ映画。  十代の妊娠という問題を扱った映画として見ると、なんか軽すぎていまいち。そっちを期待して見ると、たぶんがっかりする。  はらました男の扱いが超いい加減だったり、「いやー主人公たる者、中絶するかなんて1分以上悩むわけにはいきませんよねー!」みたいな空気もアレだし。  純粋にウィットを楽しむコメデ...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年5月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。  ★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 『パノラマ島綺譚』★★★★  江戸川乱歩:原作/丸尾末広:画。これ以上ありえないぐらいはまってる組み合わせ。 『顔は口ほどに嘘をつく』★★...
おすすめ書評まとめ

書評在庫一掃セール2009年4月版

最近読んだ本、またはずっと紹介したいと思っていた本の中から、個別エントリにするタイミングがなさそうなものを、まとめて一挙紹介。★は1-5個でオススメ度。人に薦める価値がまったくないと思うものはそもそも取り上げないので、1個でもつまらないという意味ではない。 土居健郎『続「甘え」の構造』★  『「甘え」の構造』の続編。つまらなくはないが前作以上のものは特に。 立花隆『電脳進化論―ギガ・テラ・ペタ』★...
科学技術哲学

無能で説明がつくことを陰謀のせいにしてはならない

ハンロンの剃刀 「無能で説明できる現象に悪意を見出すな(直訳:まさか、愚かさによって充分に説明できるものを悪意のせいにする必要なんかありません。)」 Robert J. Hanlon Never attribute to malice that which is adequately explained by stupidity.  というのは、オッカムの剃刀(=思考節約の原理)の系で、レベルの低...