科学技術哲学 スティーブン・ジェイ・グールドのエッセイ中で一番好きな部分 紙を整理していたら昔メモったものが出てきた。 収録の本がどれだったか思い出せないがジョー・ディマジオの連続安打の話の最後の部分であるのはほぼ間違いない。 何かで言及する機会がありそうだからここに書き写しておこう。 ある生物種の歴史や、混沌とした世界で途切れずに続いてゆくことが必要なあらゆる自然の現象は安打の連続記録のように進んでいる。全ては限られた賭金で無限の資産を持つ親に立ち向かうギャンブ... 2007.9.18 科学技術哲学
科学技術哲学 リチャード・ドーキンス『祖先の物語~ドーキンスの生命史~』 こ・れ・は、素晴らしい! 殿堂入りクラス。 内容については訳者あとがきの記述が十全なのでその引用に留めるが、グールドを精神上の師の一人に数える私には特別な感慨がある。 とにかくこれは超オススメ。 本書は、進化生態学の巨匠ジョン・メイナード・スミスに献じられているが、ある意味で、「宿敵」スティーヴン・ジェイ・グールドに捧げられた本とも言える。『社会生物学論争史』の中でセーゲルストローレは、ドー... 2007.8.26 科学技術哲学
科学技術哲学 ショーン・B・キャロル『シマウマの縞 蝶の模様 エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』 突然だが、この世で最も驚異的な自然現象はなんだろう? 虹? オーロラ? 台風? 噴火? 津波? 超新星爆発? 大きい方はそんなところかもしれないが、小さい方に目を向けると胚発生が有力な候補に入ってくると思う。驚異と感じないとすれば、それは毎日その結果を見すぎて慣れてしまっているからだろう。 最近になって急速に進歩した発生生物学についての本。面白かった。以下は前書きからの抜粋。 ノーベル物理学... 2007.8.23 科学技術哲学
科学技術哲学 ドナ・ハート ロバート W.サスマン『ヒトは食べられて進化した』 ヌーやインパラのような動物がライオンやハイエナに捕まってもりもり食われている。テレビの自然番組でお馴染みの光景である。 では霊長類――いわゆる猿――がヒョウやトラに捕まってもりもり食われている場面を見たことがあるだろうか? 私は昔この手の番組を平均よりかなり頻繁に見ていたと思うが、そんな場面は全く見たことがないと断言できる。 これは何らかの真実の反映なのだろうか? つまり猿は賢くて強いから他... 2007.7.11 科学技術哲学
科学技術哲学 アンドリュー・パーカー『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』 これも読もう読もうと思って後回しになっていた。いわゆるカンブリア大爆発についての本。 カンブリア大爆発についてはとにかく『ワンダフル・ライフ』が有名だが、この本でのグールドは、人間の進化が偶然の結果であるという意見――それは正しいと思うが――を強調するあまり、バージェス動物の異質性・多様性を過大に強調してしまった面があり、カンブリア大爆発などと言うのはただの誇張で実際は何も特別なことなど起きては... 2007.5.2 科学技術哲学
WEB情報通信 パンダの親指でキーボードを叩く話 その1 さて、良いキーボードが欲しくなった理由について。そもそものきっかけはスティーブン・ジェイ・グールドのエッセイ『テクノロジーにおけるパンダの親指』であった。その要約を示そう。 パンダが指で竹を掴み、ごしごしと枝をしごきながら食べているところは見たことがあると思う。その時器用に使われている親指に見えるものは実は親指ではなく手の骨である。 パンダは外見通り熊に近い系統の生物で、熊と同じく親指は他の4... 2006.5.1 WEB情報通信
科学技術哲学 自殺せずに生き残っているのはアホばかり? 私は子供のころ「世の中の立派な人・頭のいい人・勇気のある人はとっくの昔にみんな自殺してしまっていて、この世に生き残っているのはみんな意地汚くて頭の悪い意気地無しばかりなのではないか」と半ば本気で考えていたことがある。 なぜって? そうとしか考えられないではないか。鳥や魚や獣はいかなる理由があっても自殺しない。するのは人間だけである。あらゆる生物の中で人間だけが持つ高度な知能・精神などが、その原因... 2005.12.8 科学技術哲学