ガイア教の天使クジラ25 ガイア教史上最重要人物ジョン・カニンガム・リリー

(今日の一コマ)

第24回】 【目次】 【第26回

 さて第2ラウンド開始である。これから4人のガイア教徒と対決していただくが、今度の相手はこれまでと違ってプロである。

 みな名だたる大学の博士であったり、権威的な科学者であったり、立派な団体の職員であったりする。みな実際に社会におけるイルカ・クジラのイメージを変えたり、反捕鯨運動に重要な役割を果たした人物ばかりである。

 彼らは、ガイア教のほんの上っ面を撫でただけのユリカさん*1や、テレビでの又聞きをたれ流しただけの第10回の男などとはわけが違う。第12回で読者の心胆を寒からしめたビクター・ケラハーですらも、個人的には好きなのだが、彼らの前ではほんの下っ端にすぎないと認めざるを得ない。

 私があえてそのような雑魚に長い前置きの時間を費やすことを選んだことには、その方が面白いという構成上の理由以外にも、免疫をつけるという目的があった。彼らをダシにして、どうしても先に文化人類学的思考と西洋思想史についての最低限の基礎知識を身につけておいてもらいたかったのである。

 第13回に書いた、シーシェパードの件による順番変更でそうなったわけではない。あそこで飛ばされた文学作品が一つあるが、位置づけとしては『クジラの歌がきこえる』に近いものである。まだ紹介する価値はあると思っているので良い機会あれば息抜きに入れるかもしれない。

 逆に言えば、その準備なしにいきなりここに突入した場合、読者が「やっぱりこいつらは頭がおかしい例外的な人間にすぎない」とあっさり片づけてしまったり、もしくは恐怖に耐えきれずに目と耳を塞いで逃げ出してしまったり、あるいはもっと悪くすれば……改宗させられてしまうことを危惧したのである。

 その危惧はまだ完全に消えたわけではない。この先を読み進めるにはしっかり覚悟を決めて、そのぐらい警戒してほしいということだ。では早速トップバッターを紹介しよう。先に予告した通り、私が考えるガイア教史上最重要人物だ。

 一人で歴史上の3つの存在の大いなる連鎖全てに関わり、最初期のイルカ知能研究者であり、ニューエイジ文化の中枢に位置したグルであり、大衆の間でのイルカ・クジラのイメージを大きく変えたその男の名はジョン・カニンガム・リリーである。

*1:本人はそう言われるのは不満だろうが仕方ない。そう評さざるをえない理由は、いずれ詳述しよう。

予習用資料

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おまけ

 彼がモデルとなった映画。さすがに古すぎるせいもあって、普通の意味ではあまり面白くはないが、この1だけでも見ておくと時代の雰囲気が掴めていいかもしれない。

コメント

  1. 木戸孝紀 より:

    >携帯厨さん
    >漫画家佐藤史生の「やどり木」という短編
    初めて聞きました。ちょっとググって出てきたところの説明を見たら『砂の惑星』を連想しましたが。
    >ガイア教徒の斜陽
    本編でその話になるのはまだ大分先だと思いますが、500年の歴史を見てきて現在の状態がすでに斜陽も斜陽、斜陽中の斜陽だということがわかりませんか。

  2. 携帯厨 より:

    初めまして。お目汚し失礼します。
    今回の話で、漫画家佐藤史生の「やどり木」という短編を思い出しました。
    彼女はガイア教徒ではないでしょうが、ニューウェイブSF等当時のポップカルチャーに影響を受けた作風なのだなとあらためて思いました。
    それにしてもガイアの夜明けならぬ、ガイア教徒の斜陽がどうすればもたらされるのか、全然想像がつかない!
    次回も期待してます。

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