アルフレッド・W.クロスビー『ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10~20世紀』

ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10〜20世紀

 アルフレッド・クロスビーつながり4冊目。それなりに面白かったが、『銃・病原菌・鉄』とほぼ完全に重複する内容であり、そちらの方が時代的にも後でより洗練されているので『銃・病原菌・鉄』を読んだことがある人は、差分の分しか面白くないかもしれない。訳者あとがきより。

 本書の原題はEcological Imperialism: The Biological Expansion of Europe, 900-1900,直訳すれば「生態学的帝国主義、西暦九〇〇~一九〇〇年のヨーロッパの生物学的拡張」という事になるだろう。

(中略)

 我々が普通「帝国主義」という後を使う場合、欧米の先進資本主義諸国が弱小国を収奪し、植民地獲得競争をくり広げ、しかもそれが悪であるという自覚はあまりなかった一九世紀後半以降第二次世界大戦までの世界を思い出す。本書の著者クロスビーは、太古の人類であろうとも、一民族が他の民族の土地を奪ったり領土を広げたりする行動を「帝国主義」だという。一五世紀末に新大陸を発見し、次々に発見されてゆく新しい土地を自分のものにしていったのは、ヨーロッパ諸国の典型的な帝国主義的行動だった。しかもそれを可能にした根本には、生物学的、生態学的諸要素が厳として存在することを本書は的確にとらえている。

(中略)

 さらに本書は、一六世紀以降、ヨーロッパ人の世界進出を助けたものとして、病気だけでなく、馬、羊、牛、豚などの動物、それに雑草などの植物に注目している。各地でこれらヨーロッパの家畜が野生化し、爆発的に繁殖したのはなぜか。ヨーロッパの雑草がアメリカやオーストラリアであのように旺盛に広がり、以前からある植物を駆逐していったのはどういう生態学的機能の働きなのか。新世界の植物で旧世界で盛んに繁殖するものがあんなに少ないというのに。

(中略)

 また著者には一九世紀的な人種主義が全く無いことも指摘しておく。アボリジニーやインディアンなどが、ヨーロッパ人より劣っているという考えがほんの少しでもあったら、遠い国々をヨーロッパ人が支配していることが当然至極のことと思え、それについて考えてみようという気にもならないだろう。偏見から自由になったとき、どれほど多くのことが見えてくるかを本書は教えてくれる。

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おまけ

 農業とか植生とかヨーロッパとかいろいろつながり。ただの草刈りのはずなのに何故かシュール。

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