科学技術哲学

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エドワード・オズボーン・ウィルソン『知の挑戦―科学的知性と文化的知性の統合』

『社会生物学』で有名なエドワード・オズボーン・ウィルソンの本。  読んだのは大分前だが、下のシロアリの倫理のくだりをメモしたくてもう一度借りてきた。  人間が自明と思っている様々な倫理・道徳が、高い知能・複雑な社会から直接に出てくるわけではなく、進化や遺伝と不可分なのだということを言った、有名なたとえ話。 シロアリが現生種の社会レベルから文明を発展させたとしよう。たとえばオオキノコシロアリという、...
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サイモン・イングス『見る―眼の誕生はわたしたちをどう変えたか』

視覚全般に関する本。質・量・ひろがり・まとまりどの基準を取っても最高クラスです。超おすすめ。 プロローグ 若さと老い 第1章 感覚の共同体 第2章 視覚の化学 第3章 どのようにして眼は可能になるのか? 第4章 適応する眼 第5章 見ることと考えること 第6章 視覚の理論 第7章 視覚能力を授けられた神経質なシロモノ 第8章 色を見る 第9章 見えない色 第10章 眼が見るということ エピローグ ...
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考える葦

人間は自然のうちで最も弱い一茎の葦に過ぎない。しかしそれは考える葦である。これを押し潰すのに、宇宙全体は何も武装する必要はない。風のひと吹き、水のひとしずくも、これを殺すに十分である。しかし、宇宙がこれを押し潰すときにも、人間は、人間を殺すものよりも一層高貴であるだろう。なぜなら、人間は、自分が死ぬことを知っており、宇宙が人間の上に優越することを知っているからである。宇宙はそれらについては何も知ら...
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パズル・ロワイアル答え合わせ

パズル・ロワイアル  全員で生還する確率を上げたければ、皆が何かしらの意味で協調した行動を取らなければならない。それなのに、挑戦中にも挑戦後に一切情報をやりとりできない。この一見取り付く島もなさそうなルールの裏をかくにはどうしたらいいか。  情報をやりとりすることはできなくても、新しく全員が得ることができる情報がひとつだけある。というか、ひとつしかない。名前の書かれた紙である。突破口があるとしたら...
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パズル・ロワイアル

極東の全体主義国家大東亜共和国では、学力向上のため、全国の中学3年生のクラスから無差別に数十クラスを抽出して、命を賭けたパズルをさせるという怖ろしいプログラムが実行されています。  あなたの3年B組(生徒数42名)は運悪くこのプログラムに選ばれてしまいました。そして、今年のパズルのルールは以下のようなものです。  今からクラスの生徒は一人づつ別々に、42個のロッカーがある教室に案内されます。それぞ...
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ジョン・ホイットフィールド『生き物たちは3/4が好き 多様な生物界を支配する単純な法則』

ダーシー・トムソン以来のアロメトリーの話題から始まって、生物学・生態学に対する数学的・工学的アプローチに関する本としてなかなかうまいことまとまっている。  昔『ゾウの時間ネズミの時間』という本が流行ったけど、あの頃から比べるとまたかなり理論が進歩しているので、更新してみるのもいいのでは。おすすめ。  余談だが、この話をガリバー旅行記で説明した絵本を読んだような記憶があるのだが、情報を引き出せない。...
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ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体』

あなたの住んでいるスペースコロニーが何かのはずみで、物理法則は同じだけど他に何もないからっぽの宇宙に一個だけ迷い込んでしまいました。  さて、このコロニーは自転によって人工重力を維持することが、 できる(他に何もなくたって空間に対して回転してるんだからできるよ!) できない(他に何もなければ回転しているという概念には意味がないのだからできないよ!)  どっちだかわかります? 自信持って答えられる人...
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ポール・デイヴィス『幸運な宇宙』

原題"THE GOLDILOCKS ENIGMA Why is the Universe Just Right for Life?"(『ゴルディロックスの謎 なぜ宇宙は生命にちょうどよいのか?』)。  ゴルディロックスとは童話3びきのくまの主人公の女の子のことで「特別にあつらえたわけではないはずなのになぜかちょうどよい」ことを表す。  テーマは『宇宙のランドスケープ』の時にやや詳しく取り上げたので...