知る人ぞ知る怪作。タイトルの時点ですでに何かが決定的におかしい。
内容も、輸入雑貨の貿易商を個人で営んでいる井之頭五郎という普通の男が、腹を空かして普通に食事をするというだけ。本当にただそれだけ。
藤子不二雄のSF短編で、食事と性行為に関する羞恥心の概念が逆転した世界に迷い込んでしまう男の話があった。(参考)
その世界では、食事は個体の維持にしか貢献しない利己的な行為だから、一人隠れてこっそり行う恥ずかしいものであり、性行為は集団の維持に貢献する利他的なものであるから、正々堂々とおおっぴらに行うべきである、とされている。
従って、その世界では歩きながらサンドイッチを食べるような気安さで路上性行為が行われ、「食事会」が現実世界における「乱交パーティー」に相当するものになっている。
どうもこれを読んでいると、そのSFは半分正しいのではないかという思いにとらわれる。
つまり、人間がものを食う時は一人なのが自然であり、それを克明に描写する――たとえばこの作品のように――のはエロティックな覗き行為であり、いわゆる普通のグルメマンガというのは、乱交パーティーのような倒錯した変態行為なのではないかと。
おまけ
個人的にはゴローちゃんネタといえばテクテクさんのイメージが強い。
by 木戸孝紀
tags:SF グルメ コミック 久住昌之 谷口ジロー
最近連続していい評判を聞くので、引っ越し準備の息抜きに、1巻を注文して読んだ。確かにすごく面白かった。
大急ぎで2巻も続けて注文しようと思ったらAmazonで品切れになってる。そりゃなるわな。死ぬほど使い古された題材に思えても、ちょっとした工夫と表現力次第でまたすごく面白くなる、という好例かもしれない。
何言ってもネタバレになりそうなので、曖昧な言い方しかできないが、
描写まんべんなくあるので、成人向けというわけではないが、お子様はご遠慮願いたい。大人のマンガ好きはネタバレに出会う前に1巻入手に走れ。好き嫌いは分かれるだろうが、損したとは思わないはず。
(ネタバレになりそうな感想はコメント欄に書いた。1巻読んだ人だけどうぞ。)
おまけ
「夜は自己嫌悪で忙しいんだ」
by 木戸孝紀
tags:コミック 花沢健吾
昔見たあるコマを利用したくて再読したついでに。
禅問答というのは、通俗的には訳のわからん問答の代名詞的に使われていますが、実際にもやっぱり訳のわからん問答です。
いくら「二元論的な思考を乗り越えるための」とかなんとか理屈をつけてみても、結局やってることは
「全然違う! まったく逆! お前は何も悟ってない!」
とお互い言い合って、気圧された方が負けというだけなのです。
……あれ? 意外と現代も変わらないかも。まあとにかく、現代人的な意味での「議論」や「問題」ではないのだということを、ちゃんと理解して楽しむ分には、いいものだと思います。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:コミック 宗教 禅 仏教
経由で知る。これは確かに最高級に面白い。
で以前注目したように、『鋼の錬金術師』は、現代少年マンガを薄く広く覆っている「不殺」的発想を一歩破って進んでいるように見える。
このことが、作者荒川弘の農家出身という属性に寄っているのではないかという考えは以前から持っていたが、これを読んで確信に変わった。
- ヒグマの気配に死を覚悟したり
- 珍しい障害を持って生まれた仔牛を実験用に提供するかひと思いに処分するか悩んだり
- 家族がみんな死にかけたり骨折ったり血が出たりする怪我をしたことがあったり
というような経験なくしては、間違いなくハガレンはなかった。
そういうことを考えなくても、単純にエッセイとしても雑学としてもマンガとしても面白い。農業高校の回では『動物のお医者さん』を思い出したりもした。傑作。おすすめします。
おまけ
by 木戸孝紀
tags:エッセイ コミック ハガレン 荒川弘 動物 農業
の続きみたいなもの。
を書くために『野望の王国』を読んでいたら、ヴォルデモート卿にまったく食指が動かなかった理由がわかった。
私がハリポタシリーズで一番好きなキャラは、断然アルバス・ダンブルドアなのだが、途中まで完全無欠の人格者のように描かれていた彼が、なんと
「ぼくたちがホグワーツで魔法を学んだのは魔法使いがマグルを支配する仕組み権力をつかむための方法を学ぶためだったといっていいでしょう!」
みたいな中二病的妄想に捕らわれたことがあったという事実が明らかになる。
もちろん、ある事情で実行には移されないのだけど、これほど魅力的な悪の可能性が目前で絶たれたことを知った後では、つまるところずっと「死にたくないでござる!! 絶対に死にたくないでござる!!」ぐらいのことしか言ってないヴォルデモートなんて……。
たとえるなら、アナキンがダースベイダーにならずに最後までダースモールがぴょんぴょこ跳ね回ってるスターウォーズサーガみたいなものであって、魅力なくて当たり前だ。
おまけ
中二病+魔法→エターナルフォースブリザード→相手は死ぬ
by 木戸孝紀
tags:コミック ハリポタ 小説 野望の王国
のでメモ。
橘:
もし暴力を全て否定するなら国家の秩序も否定しなければならない
なぜなら秩序を保つのは警察力という暴力機構にほかならないのだから
いい暴力と悪い暴力があるというならそのいい悪いは誰が決めるのか…
そんなことも考えず暴力はいかんなどと叫ぶことは自分を支配される側に置くのだということに どうして気づかぬのか
片岡:
大衆が暴力に対して女みたいなヒステリー症状を示す間は日本最大の暴力団である警察と自衛隊を抱えている民自党政府の思うままだ
歴代の首相が全て汚職に関係した前歴をもつ男たちであるという 世界にも例のない腐敗した政治機構は維持されるだろう……
橘:
この世は支配するか支配されるかのどちらかしかない!
支配するか されるかの決定的要因は暴力だ!
それが政治の本質なのだ!!
それに気づかぬ愚劣な大衆は踏みにじられ続けるがいい!!
だがおれたちは違う!!
おれたちは自分たちの世界を作るために牙を振るうのだっ!!
(『野望の王国』完全版4巻P598-599)
おまけ
検索でひとつしか引っかからないってどういうことなの・・・
by 木戸孝紀
tags:コミック ネタ 政治 野望の王国
という質問を受けたことがある。どんなシチュエーションで聞かれたかはよく憶えていない。(たしか『トライガン』の絶頂期だったので、おそらくニコラス・D・ウルフウッドを念頭に置いた質問と思われる。)
しかし、どう答えたかははっきり憶えている。私は「そりゃ本物の神父が出てきたらキモいからに決まってんだろ」と答えた。
その後、日本のマンガ・アニメにもわずかながら本物の神父は登場するようになった。代表的なのはベルセルクのモズグス様だ。
『HELLSING』のアンデルセン神父も、モズグスに比べると微妙ではあるが、やはり単なるコスプレとは一線を画している。
彼らは、もちろん漫画的誇張を施されてはいるが、ある意味確かに「本物」の神父であり、それ故に日本ではモンスターあるいはフリークスとならざるをえないのである。
おまけ
やはり日本ではウケが今ひとつ。
by 木戸孝紀
tags:アニメ コミック ベルセルク 宗教 日本
イランの裕福でリベラルな家庭に生まれた女性の自伝的マンガ。これは最高に面白かった。つべこべ言わずにとにかく読め。この面白さは文章では伝えづらい。
雰囲気を見たければ映画版のトレーラーを。映画は未見だがなかなかよさそうだ。実際はトレーラーの印象よりもシリアス成分多めである。
2巻も大急ぎで借りてきて続けて読んだが、1巻と比べるとあまり面白くない。1巻だけでもちょうど区切りが良いので2巻は省略するのもありか。
同作者の『刺繍』もついでに読んだ。イラン女性たちが集まって結婚や性にまつわる愚痴や噂を延々と続けるマンガ。面白いかどうかは人によるだろうが、こんな話めったに聞けるものではないのでどんな人でも一読の価値はあると思う。
おまけ
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by 木戸孝紀
tags:イラン コミック 自伝 女性 歴史