科学技術哲学

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ウィリアム・パウンドストーン『選挙のパラドクス―なぜあの人が選ばれるのか?』

アローの不可能性定理 社会選択理論 投票の逆理 戦略投票  のような内容に関する本。今のところ候補ごとに1〜10点などと評価をつけさせる範囲投票が一番ましに見えるという結論らしい。  当たり前だが具体例がアメリカの話ばかりなので、読んだ面白さはウィリアム・パウンドストーンの他の著作に比べると大分劣ってしまう。  これらの話題に関しては昔もっと簡単に面白みを伝える本を読んだ記憶があって、そちらを同時...
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アルフレッド・W・クロスビー『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』

アルフレッド・クロスビーつながりで三冊目。1918〜1919年のスパニッシュ・インフルエンザ、通称スペインかぜのパンデミックを扱った本。超不謹慎だが終始、映 画 化 決 定 ! ! というテロップが脳内を流れっぱなしであった。めちゃめちゃ面白い。  強毒性のインフルエンザが発生した。折しも世界は第一次世界大戦のまっただ中。冷たい雨の中を行軍し、狭い船に詰め込まれて移動する大勢の兵士達が、戦時公債購...
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ブラッドリー・C.エドワーズ フィリップ・レーガン『宇宙旅行はエレベーターで』

軌道エレベータにはSF等ですでにお馴染みの存在だとは思うが、最近まであくまで空想の存在であり実現可能だとは思われていなかった。このために使えるほど軽くて張力に耐える物質など存在しうると思えなかったためだ。  全てを変えたのがカーボンナノチューブ。ただでさえ限りなく魅力的な新素材だが、なんと軌道エレベータのケーブル素材としての任に耐えそうなのだ。そして、それ以外に軌道エレベータのために必要な技術は、...
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セス・ロイド『宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』

宇宙は常に時代精神の最先端を走るイメージでたとえられます。  大昔は宇宙は大きな卵だったり、亀の背中に乗ってたりしました。中世ではもちろん宇宙は神でした。科学が勃興すると宇宙は時計仕掛けの機械だと言われたこともあります。コンピューターが発達した頃は宇宙はコンピューターだと言われ、複雑系ブームの頃は宇宙はカオスの渦だと言われました。  そして現在。いよいよ量子コンピューターが現実味を帯びてきたので、...
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ビョルン・ロンボルグ『環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態』

昨日の映画と、『生物多様性という名の革命』の山形浩生で思い出した。  要するに「このままではもうすぐ人類は滅亡する!」みたいな恐怖を煽るお決まりの話には眉に唾つけて、環境対策はリスクとコストとベネフィットを総合的に判断してやろうぜ、という話。  核融合エネルギーの実用化可能性について楽観的すぎたりとか、つっこみたくなるところはいくつかあるが概ねまともと言ってよい内容。  ただし、これに便乗したかの...
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太陽は地球の周りを回っている(ただし摩訶不思議力で)

科学の公理の話の補足的なもの。  たとえばオッカムの剃刀のような話は、哲学者がこねくり回して遊ぶものであって、現実には全く、あるいはほとんど関係ないと思っている人がいるかもしれない。  だが、全然そんな事はない。しばしば科学の進歩の代表例みたいな扱いを受けている天動説と地動説のどちらが正しいかという問題だって、それなしには決められないのだ。  たとえば、元の元のページを見つけられなかったので孫引き...
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直感的分類カテゴリーにひとつだけ違反するものは流行る法則

パスカル・ボイヤー『神はなぜいるのか?』を読んでから、二つの観点が頭に残り続けている。 宗教というのは極めて現状追認的なものであるということ。 宗教的概念として受け入れ可能なものは、人間の持つ直感的な分類カテゴリーに違反するような属性が、ひとつだけ加わったものであることが多いということ。  前者は、多くの人が貧しく苦しかった過去の時代には苦難をよしとするような宗教が流行り、「人間には無限のエネルギ...
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ニール・シュービン『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト―最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅』

ティクターリク(Tiktaalik)の発見者が書いた本。とは言っても話はティクターリクだけに留まらず、 魚類から四肢動物への進化の過程 エボデボ(発生生物学+進化生物学) 人類と他の生物が祖先を同じくすることの意味  と、多岐にわたる。それぞれについては関連図書にあげたような本の方が詳しいが、その全てが約300ページ・2000円とかなり圧縮してまとまっている。すごくいい本だと思う。今まで興味がなか...