2010 6/27

リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理

 我々が恐れなければならない唯一のものは、恐怖そのものである。

フランクリン・ルーズベルト

 ルーズベルト大統領はともかく、この言葉は好きだったのに、しばらく積んでたのを後悔。これは素晴らしい。超いい。

 と並んで、一家に一冊配布を義務づけたいレベル。

  • 進化心理学本
  • メディアリテラシー本
  • 科学リテラシー本
  • 社会問題リテラシー本

 いずれの視点から見ても最高クラス。それぞれ同等以上の内容をもつ本はもちろんあるけど、一冊に濃縮した感じ。その割に価格も低めでコストパフォーマンスも最高。

 例の『The Cove』見に行く人は、これ読んでからにしてほしいかも。

参考リンク

関連書籍

おまけ

 なんでもないものが恐怖の象徴となるたったひとつのルール。

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2010 6/23

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

 原題 “Justice – What’s the Right Thing to do?”(『正義――何が正しいことなのか?』)NHKでハーバード白熱教室として放送されているらしい講義の書籍化。

 歴史を足早におさらいする感じや、日本での流行り方からは、正義論に集中した『ソフィーの世界』、といった印象を受ける。

 確かに流行るだけあって、大変よくまとまっていると思う。この分野の入門書としては最高だ。おすすめ。NHKの番組は未見だが、講義そのものはYouTubeで見られるらしいので、後でちょっと覗いてみよう。

 ただ、邦題は内容に即していない。むしろ正反対だ。『これからの「正義」の話をしよう』とあるが、「これから」の話は、ほとんど何も出てきていない。単に内容を表すものとしては『これまでの「正義」の話をしよう』の方が適切だと思う。

 この分野は今まさに、脳・神経科学および進化心理学の両面から革命が進行中で、この本にまとめられた現在までの議論は、ちょうど進化論以前の生物分類学のようなものになる可能性が高い。

 決して価値がないという意味ではない。それはそれで素晴らしい壮大な知の体系なのだが、現実の問題を解決したり、さらなる進歩の元になったりするというよりは、歴史的研究の対象になるということだ。

参考リンク

参考動画

 英語。[CC]ボタンから字幕(やはり英語)を出せるようになるようだ。

関連書籍

おまけ

 ジャスティスつながり。

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2010 5/27

要するに (河出文庫)

 山形浩生のエッセイ集。話題自体はやや古くなりかけているが、内容は別に古びてはいない。

 今回「おっ?」と思ったのはここ。

 さて、たぶん実際の世の中の制度設計というのも、このゲームの「おもしろさ」を考えるのと同じことだろう。ゲームも、まったくの自由放任では成立しない。なんらかの制度(つまりルール)があって初めて成立する。でもがちがちに規制しまくっては、ゲームが硬直する。(中略)万人による、さまざまなゲームの総和を考えたとき、最大限の「おもしろさ」を保証する制度ってどう考えればいいんだろうか。

(P286-287 制度設計と「おもしろさ」)

 上記エントリで私が、ゲームデザイナーの才能に一番近いのはあえて言えば立法者の才能ではないか? などと言っているのは、これと同じ話だ。

 しばしば訳書を好意的に取り上げてきたが、やはりこの人とは思考回路が近いらしい。他の著書も当たってみよう。

 ちなみに『山形道場』という本の文庫化らしいので、そちらを既読の人はかぶらないように注意。

参考リンク

おまけ

 これが十分コンテンツになるんだから今ゲームって難しいわな。

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2010 5/22

ヤバい社会学

 『ヤバい経済学』の一部の元ネタになったギャング研究の回顧録みたいなもの。『ヤバい経済学』とは全然趣が違うので同じようなものを期待するべきではない。

 内容そのものも興味深く、いろんな読み方ができる作品だが、すでに方々で書かれているので他に譲る。

 私が惹かれるのは、shorebirdさんが言及している

どこかで終わってしまうことがわかっている物語が醸し出す不思議な雰囲気

(書評 「ヤバい社会学」 – shorebird 進化心理学中心の書評など)

 の部分。

「時が来れば君は自分の世界に戻らなくちゃいけないんだろう? それなのになぜ戦うんだ?」
「さあ……なんでだろうな……」

 みたいなシチュエーションは異世界ファンタジーものでたまにあるが、まさにその通りの雰囲気なのである。

 いくつか通りを隔てただけの同じ街の人間の話を異世界ファンタジーのようにしまう、貧富の壁というものの圧倒的存在感。読んでいて楽しい本ではないが、これを感じるためだけでも一読の価値はあると思われる。

参考リンク

関連図書

おまけ

 どこかで終わってしまうことがわかっている物語が醸し出す不思議な雰囲気つながり。

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2010 1/26

服従の心理

 よく教科書にも載ってる有名なミルグラム実験の本。スタンレー・ミルグラムはスモール・ワールドの概念の先駆者としても有名。

 一応、旧版で読んだような記憶はあるが、

 で、山形浩生氏の批判というのに興味を持った。

 確かに、山形氏の批判は、どれもいいところを突いていると思う。この実験の今日的な解釈として同意できる部分が多い。おすすめ。

 「人間は責任を他人に預けたり、薄皮一枚かぶせて誤魔化したりするだけで、ずいぶん残酷なこともできる」という点で、

 と共通する部分が多々ある。合わせておすすめ。

おまけ

 服従服従。春閣下のは何か違う気がするので将軍様で。

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2010 1/10

(本文とは無関係)

 政治や文化の歴史は、振り子のように左右に振れるというが、この人口に膾炙したイメージは、いささか単純すぎると思う。

 歴史は一度きりの現象で、決して繰り返したりはしない。もちろん、

歴史は同じようには繰り返さないが、韻を踏む。
The past does not repeat itself, but it rhymes.

マーク・トウェイン – Wikiquote

 という言葉がすでにあるが、振り子という極めて視覚的にわかりやすいイメージを、これで上書きするのは困難な気がする。

 そのために役に立つイメージを考えるなら、とても傾斜の緩い螺旋階段だろうか。この螺旋階段を上る点を、少し離れたところから見ると、左右に揺れているだけのように見える、ということ。

おまけ

 螺旋→らせん→貞子

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2009 10/11

名誉と暴力―アメリカ南部の文化と心理

 『みんなの進化論』で言及されていて面白そうだったので読んだ。以下は超要約。

 アメリカ南部の文化が、端的に言ってマッチョ的だというイメージは広く知られている。しかし、南部人は単に何に関しても暴力的というわけではない。自分自身や女性親族の「名誉」を守るという文脈で、特に暴力を許容する傾向がある。

 よく言われてきた「奴隷制のせいで良心が摩滅しちまったんだよ」という類の説明は、「社会制度が暴力肯定を助長することがある」という一般論として正しい部分はあるかもしれないが、南部の特殊性を説明しうるものではない。

 南部の「名誉の文化」の特殊性は、初期の移民達の牧畜生活の産物である。盗まれやすい家畜が主な財産であり、公権力に頼りにくい牧畜生活では、家畜や家族を守る暴力を持たないと見なされる、すなわち「なめられる」ことは、死活問題に繋がりやすいからである。

 かなり面白かった。実験やデータの説明もなかなか面白いのでぜひおすすめ。

参考リンク

おまけ

 牧畜と文化つながり(?)

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2009 6/7

JUNO ジュノ 特別編 [DVD]

 どこかで見た評判がものすごくよかったので借りたカナダ映画。

 十代の妊娠という問題を扱った映画として見ると、なんか軽すぎていまいち。そっちを期待して見ると、たぶんがっかりする。

 はらました男の扱いが超いい加減だったり、「いやー主人公たる者、中絶するかなんて1分以上悩むわけにはいきませんよねー!」みたいな空気もアレだし。

 純粋にウィットを楽しむコメディドラマと考えれば、その映画センスは超一級。

おまけ

 赤さんにウィットといえばこれしかあるまい。

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